近未来SFといった短編集。しかも描かれているのは日常生活。便利だと思う一方で、人の感情はいつになっても変わらないと実感される。便利な機械や道具ができても、結局それらを使う人間が変わらない限り、幸せにはなれない。

人型ロボットの子供が、対人関係の調査のために貸し出され、里子にされる。ロボットだと知りながらいつしか愛着を覚えて、実の子供のような愛情を覚えてしまう危険と恐怖。

体内に埋め込まれたナノ機械により、体の不調を整える。それで済めばいいが、孤独な人はそんな機械にさえ愛情を覚え、家族の一人と錯覚してしまう恐怖。

対人関係の苦手な人向けに開発された相手の反応から、その心を類推して、ものの形を変えることで知らせる便利な道具。道具だと自覚していればいいが、いつかそれに依存して、相手の気持ちを無視してしまう。

食品パッケージに添付されたIDチップにより、食品の安全が確かめられるの便利だが。安全基準自体がいつまでも同じではないことを忘れると、一概に盲信できない。疑いを持てば際限なく迷うことになる。それにより食べることの楽しみさえ忘れる恐怖。

対人関係に悩むと、回りの色彩が気になる。それにより鬱状態になることも。離人感。それを回避するために開発された薬剤。視覚の彩度を上げる効果がある。友達に処方された薬剤を使用したことで怪我をしてしまい、それにより真実に気づく。彩度は心の持ちようで変えることができるのだと。

住むものの負担を減らし、あらゆることをハウス自体が自分で処理するおまかせハウス。そこに住み、モニターとなった人々の反応は多彩。家事労働から解放されたことで、かえって自分の存在意義や楽しみをなくす主婦。家族の幸せのために設計されたおまかせハウスが、家族の不和を生む原因となる。モニターの義務であるレポートを一切しないで、ハウスに引きこもる住人。契約違反をたてに追い出そうとすると、火をつけると脅す厄介な住人。逆手にとって、ハウスを療養シェルターの実験施設にする。光の刺激をコントロールすることで、脳内のセロトニンの量を調節し、うつ病対策に役立てる。さらに住まいだけではなく、家族さえハウスに貸し出す。しかし、それでほんとに幸せになれるのだろうか?

この手の近未来ものはやはり苦手だな。恐怖しか感じない