ラノベ風の軽い読み物だと勘違いしていた。結構シリアスな話だった。

今は藤沢で独り暮らしをしている繭は、祖母の遺品整理のために江ノ島に来た。ここで百年続く写真館の最後の主だった祖母。女流作家として多忙な母に連れられてきて、一時祖母と暮らした繭。勧められてカメラを持ち歩くようになり、写真を撮ることに熱中して、大学も写真学科に進んだ。幼い頃に知り合った友を写した写真がきっかけで、彼は売れっ子俳優になったものの、その生い立ちが騒ぎになり引退。そのあとで彼女が彼を写した写真がネットに流れて、彼女を恨んで失踪した友。それが原因でカメラを捨てた繭。

写真館には管理人がおり、誰かが住み込んでいて飼い猫もいる。意外ときれい。
整理を始めた繭に写真を受け取りに来たイケメン。江ノ島に来たときに海辺で見かけ、写真をとりたいと思った男。客に渡していない写真を整理していて、彼の写真もあった。年代の違う似た顔の男たちの写真。家族にしても三代も似るものか。その秘密は最後に明かされる。

人見知りで自分の思いをはっきり口にできない繭だが、馴染みの写真やカメラに関する話だと自信たっぷりに話せる。感覚も研ぎ澄まされて、わずかな手がかりから、真相にたどり着く推理力もある。そう言えば、三上さんのヒット作ビブリア古書堂の女主に似ているヒロインなんだ。

イケメン秋孝が整理の手伝いを申し出てはじめたものの、簡単には済まない。その間に、写真館にゆかりの人たちに出会い、彼女のトラウマなどを含めた謎解きが展開する。

写真流出の犯人探しの過程で、繭は大学時代にいかに自分が無神経な発言をして友人たちを傷つけていたことに気づく。
江ノ島入り口の土産物屋の跡継ぎの主が抱えていた秘密。
秋孝にまつわる秘密はマザコンの父親によるおぞましいことだった。その真相に気づいたのも写真からだった。そして、彼女と入れ替わりに写真館に寝起きしていたのは、管理人ではなく、失踪した友人だと気づく繭。二人の再会がラストシーン。

祖母の写真館には人生に傷ついた人々が逃れてきて癒されてきた。失意の繭は目をそらして避けていた。そんな娘を一人で遺品整理に行かせた母親の思い。それに気づいた繭。この先、どうなるんだろう。繭が写真館を引き継ぐことにはならないのかな。そんな展開があってもいいな。