著者は北海道生まれの高校の国語教師。仕事の傍ら、児童文学を創作。ちゅうでん児童文学賞受賞した本作が初の出版。
中学生の夏野は今、都市伝説、赤いペンを調査中。昨年の秋ごろから、町で学校で噂になっている。そのペンは人間になにかを書かせて、いつのまにか消えてしまう。呪いがかかっていて、不眠症にするとか、あれこれ言われているが、事実なのか空想なのか、実在するかどうか。
クラスの近藤さんが図書館で、赤いペンの話をしているのを聞き付け、聞きたいと思ったが、引っ込み思案の夏野は声をかけられない。教室でも同じような夏野の様子を見て、春山が声をかけてくれる。代わりに近藤さんに声をかけてくれて、話が聞ける。近藤さんのいとこの友達である大学生が持っていて、不思議な体験をしたと。春山の口利きで、その大学生に文学館へ来てもらい話を聞くことになる。

不思議な話、怖い話に興味があった夏野は展示会がきっかけで、文学館へ行くようになり、館員のイケメン草刈さんと自由奔放なちはやさんとは仲良し。二人も赤いペンの噂に興味があり、知り合いのバーのマダム五朗さんに紹介してくれた。
春山も夏野の調べていることに興味を持ち、アシスタントを申し出る。口下手な夏野を助けようと。春山のお母さんは病弱で病院の入退院を繰り返していて、ひまつぶしに不思議話をリクエストするのだとか。

こうして夏野と春山コンビは、何人かの人に会って、赤いペンによる不思議体験を聞くことになる。その中に出てくるおばあさんに夏野は何か覚えがある様子。
夏野は幼い頃、両親と別れ、民宿を営む祖母のもとで暮らしていた。その祖母が不思議な話をよくしてくれた。だから好きになった。しかも祖母も赤いペンを持っていた。

不思議な体験をもたらす赤いペン。その因縁は最後に明らかになる。素性を隠したまま、多くの不思議話を書いた幻の作家片桐筆。ちはやさんが次の展示にしようとしている作家。その正体があきらかになるとともに、処女作も見つかる。赤いペンの秘密が明らかになる。

何か、物語はあるかい?そう書かれる片桐筆の作品。人が持つ物語をつむぎながら、人から人に旅をする赤いペン。ペンに隠された物語はどんなものなんだろう?

なかなか興味深い、心暖まる作品だった。