はじめての作家さん。図書館で見かけたことはあるが、表紙絵がアニメぽくて、ラノベ風の軽い作品だと思い込んでいて、気にはなったが手に取らなかった。これは文庫で、やはり表紙絵も同じような絵だったが、喫茶店と上映会という言葉に引かれて借りた。

日常の謎系の謎解きはあるものの、シャッター通りの再生と、それを目指して奮闘する主人公たちに心暖まる感じがして、予想外に良かった。他の作品も読んでみたくなった。

主人公はセクハラ上司を殴り倒して退職した亜樹。中学時代に一年間だけ世話になった大伯母のもとにいる頃に、好きだった地方都市の駅前商店街に十年ぶりに帰ってきた。ひとつには故郷はここだという思いがあったのと、世話になった独り暮らしの伯母さんが最近なくなり、その屋敷を相続し、残ったものの処分を任されたため。
思いでの商店街に足を踏み入れて愕然とする。シャッター通りになっていた。遠くからも客が来ていたカレー店は主人がなくなり閉店。近くの病院も移転して人通りがない。

一番気に入っていた映画の上映会をしていた昔風の喫茶店も閉店間近の状態。マスターは死んで、後を継いだ野川さんも車イス。店に車が突っ込み、窓の付近が壊れている。客もほとんどなく、改装費用もないし、店員を雇う資金もないため、閉店するつもりだという。

閉店前に昔懐かしい上映会をしてほしいと強引に頼み込んだ亜樹は、今は教師の昔の同級生に協力を頼み、上映会を開催。
ひょんなことで知り合った昔のカレー店の味を受け継いでいた孫娘にも協力してもらい、予想外の客を迎える。壊れた窓付近を取り除けて、オープンカフェにすれば、夏の今ならやっていけると、亜樹が遺産の一部を資金にして、共同経営者として再開する。昔馴染みなども来店し、新しい店も商店街にできて、明るい未来が見えたと思った時に、店舗が焼失する。新築するだけの資金もないし、借りる当てもなく、進退極まった時に聞いたのが、クラウド・ファンディング。その会社に見返りよりも夢を託す小口の投資家をネットで募集して、資金を得る。慣れないことながら、喫茶店を残したい、上映会を続けたいという思いを支えにがんばって、ついに新たな店を立ち上げる。
亜樹の回りで起こる不思議を野川さんが謎解きするミステリーもあるが、私には亜樹たちの店を再生するまでの奮闘が心に響いた。いいなあと思えた。

こんな作品ならまた読んでみたいなと。