長年気になっていた作品をようやく読了。鮎川哲也賞は本格ものだと言う先入観があったが、これは日常の謎に類するミステリー。そういえば鮎川賞受賞作家に加納朋子さんや森谷明子さんもおり、日常の謎でも受賞していたのだった。

作家名が気になっていたが、作品の後半に出てくる回文になっているのだと、選者の講評で気づいた。ローマ字表記にすると回文になる。どちらから読んでも同じになる。

舞台は海に面した田舎の町、港を見下ろす丘の上にある児童養護施設七海学園。就職して二年の保育士春菜が学園で噂の七不思議の謎を解く構成になっている。とはいえ、前半では謎解きは児童相談所職員である中年で大柄な海王さんが行っている。問題を抱える子や学園内での問題児をみんないい子ばかりだという海王さんは、彼らについて春菜が話すことの中に、ちょっとした違和感を見つけ、真相を探り当てる。

春菜は大学時代に知り合った友達佳音にも愚痴混じりに学園の話をよくするので、少し変だなと思っていたが。ラストになって明らかになった。七不思議の謎解きはその背景の深刻な社会問題を度外視すれば、謎解きとしてはあまりすごいと思われなかったが。それらが結び付いて、それらに貫通する少女が見えたとき、感動的な物語となる。

死んだはずの先輩を見かけ激励された葉子。
高校三年で卒業間近な戸籍のない優姫の隠していた秘密。

離婚した父の婚約者に馴染めない沙羅が漏れ聞いた父親の言葉の謎。

昔、一週間だけいて行き止まりの階段から消えた少女の謎。

県内の養護施設の合同行事に起こった問題を解決に導いた少年少女の偽装恋愛事件。裏庭の門の高所にある鍵を外からはずす浮き姫伝説。

暗いトンネル内で聞こえた天使の声。

七番目の謎は春菜の身近にあった。親友佳音の秘められた過去と学園との関係。

彼女こそが六つの謎に共通する人物だった。その過去に秘められた人生と、それから脱却して未来に向かう希望の光。七つの入り江の七つの海を今照らす星の光は、数百年前に遠い宇宙の彼方から来たもので、今はもう存在しない星かもしれない。でもその光が不幸な生い立ちを持つ子供たちに未来への道を指し示している。

続編も読んでみようかな