二十五歳の会社員明海が、アパートで飼っていたネコの死体を、部屋の前の小さな庭に埋める場面から始まる物語。女みたいな名前で学校でからかわれたりいじめられた彼は、夜遅くまで仕事で忙しい両親に代わり、面倒を見てくれた海女の祖母に言われた。どんな河の水も受け入れてしまう海、そんな海のような人になってほしいと。

厚紙の企画営業する明海の部署は、出世には縁がないが心優しい課長補佐と、やり手の先輩弥生だけ。美人でやり手の弥生が、傷心してる彼を飲みに誘い出す。はっきり言葉にはしないが、弥生は彼に気がある様子。

ペットを亡くした傷心のために目についた古本屋の本『死を輝かせる生き方』。人生を生きる名言がちりばめられてはいたが、彼に響いた言葉は一つだけ。しかも赤ラインが引いてある。元の持ち主も同じような気持ちなのか。本に挟まれていた名刺。個人ライターの肩書きに電話とアドレスまでついている。怪しまれないように、メールを出してみると。
返信が来た。間違って売りに出したから、買い戻したいと。近くに住んでるから会いたいと、喫茶店を指定される。その喫茶店はもう忘れたが、森沢さんの別の作品に出てたような気がする。

話してみたら趣味も合い、気持ちが近づく。五歳年上のライターあかね。そんな二人が時々あっては、近所に詳しいあかねの案内するお店で飲んだり食べたりして近づく二人。

そんなあかねには実は彼氏がいた。五歳年上のデザイナーで今は入院中。しかも余命宣告を受けている。知り合った本もその人からのプレゼント。落ち込む自分を食い止めるために、あかねさんがかけている見えない眼鏡、きらきら眼鏡。身の回りの幸せを見つめ、生きて今ここにいる奇跡と幸せに気づかせる眼鏡。あかねに心引かれながら、死期の迫る恋人を思い、気持ちを打ち明けることもできない明海。千葉で缶詰工場を営む両親と姉夫婦。ご無沙汰な実家に帰るように姉に言われて、あかねを海がきれいな実家付近につれていく。両親に紹介はできないが、姉とは顔合わせする。それが虹の岬の喫茶店。あかねと姉は意気投合したようだが。

先輩の弥生は得意先の大会社からヘッドハンティングを受けていた。明海への思いと転職で迷っていた。一緒に行った大阪出張で、彼の死を報告するあかねの知らせに、すぐに帰るという明海に、弥生も明海への思いを断ち切り、転職を決意する。

明海とあかね、時間はかかるがいつか結ばれるだろう。
心暖まる話だった。