山間の町の町長夫人の葬儀場。出棺の時、枕飯が入っていた茶碗をスタッフが地面に投げて割ろうとした瞬間、声をかけた若い女性。その茶碗こそ毒殺された夫人の凶器となった毒が塗られた茶碗だと主張し、いくつかの疑問点を挙げ、推理考察して、ついには犯人まで突き止めてしまう。立ち去る間際に名乗ったのが、タイトルの肩書きと名前。

しかし、実は彼女はまだ学者とは言えない。博士課程の大学院生。葬送儀礼に魅せられて、民俗学から葬送風習を独立させようと願っている。
彼女が所属する民俗学研究室の教授は、民俗学の創始者と言われる柳田国男オタクで、数年前に出した本がベストセラーになって注目されたものの、以後目立った業績はない。抗議もいい加減で、雑用は院生のあまねに押し付け、提出されている博士論文を読もうともしない。

いまだ童貞で、第ニ作のためにと、相手探しに余念がない教授。一見ユーモアミステリーかと思ったが、教授の行状を読んでいたら、正直、それほど上品ではなく、馬鹿馬鹿しく思える。

特異な葬送儀礼の残る地方の協力者と契約を結び、その死に際しては、葬送の様子を見たり記録に残すことを許されているあまね。いつ葬儀の知らせが来るかもしれないと、友引以外はいつも喪服を着用しているあまね。
三度も結婚を重ねる母から見たら、あまねは世間知らず、男知らずのうぶな女。安定した就職を辞退してまで、研究に没頭することが不安で、何度も電話をかけてくる。そんな母親のキャラクターも、かなりおかしい。

葬送に関わって起こる事件のなぞをあざやかに推理して解決に導くあまねはかっこいい。私としては、教授や母親をあまり出さずに、あまねの行状だけの方が、まともに読めるような気がする。

その推理力は三歳で生き別れた実の父親の血を引き、最大関心事の葬送儀礼は、成人するまで育ててくれた葬儀屋だった父の血を引くのかな。ただ思春期にはその仕事を嫌い、父に反発するばかりで、事故死直前にもひどい言葉を投げつけたことを今も後悔する。

素行の悪さから、欠員の学会理事就任を見送られた教授。事件で知り合ったまともな学者から、移籍しないかと誘われたあまねは断る。嫌っていた葬儀屋の仕事を見直すきっかけになったのが、ダメ教授の本の一節。葬儀こそ、人生最大の愛のイベントである。だから教授に顰蹙しながらも離れられない。