南部芸能事務所シリーズ第三作。

昨日読んだ第二作目の『メリーランド』を新城溝口の漫才コンビが主人公だと思っていたが、むしろ南部芸能事務所所属の芸人たちを描いた短編集と言った方がいいのか。

前作の最後でコンビ名をメリーランドと決めた新城溝口の漫才コンビ。同棲はしてないが夜を共にすることもある恋人同士の新城と美沙。同じ大学で、漫才を始めた新城を理解し後押しをしてくれる美沙。研修生として一年たち、事務所にはなれたが、世間に売れるかどうかはまだ未知数。大学三年となり、就職のことが目の前にちらついて、二人のことが気になる。漫才師になろうとしていることを家族にはいまだ話していない。溝口と話して改めて漫才師になる決意を固めた新城は家族に電話する。

七歳年上の姉が話を聞いて、新城のライブを見に来る。こじんまりした雑居ビルの六階にあるライブ会場は狭い。漫才はよくわからなかったが、応援しようと思う姉。

トリオでコントをするナカノシマの一人、いつも暗くて目立たない中嶋。つきあってる千夏から妊娠を告げられる。堕胎は考えられない。コントをやめて、家族を養える就職をするか、コントを続けて貧しい中で育児もするか。彼のコントを待ち望む千夏。相方にもやめたいといいながらも迷う中嶋。売れない芸人を父に持った溝口は自分の家族の生活を話して、勇気づける。孤独ではないんだ、なにがしかの助けはいつもあるものだ。コントを続けようと決めた中嶋。

同じマンションで暮らして、子供の時から一緒だった漫才コンビインターバル。大手の事務所に入ったのはいいが、売れない先輩たちのパッシングがひどい。オーディションでは好評だが、今一つパンチが足りない。決め手に欠ける。家族に恵まれ何不自由なく生きてきた榎戸は独り暮らしを考える。そんなインターバルにテレビのオーディション番組の話が舞い込む。事務所が後押ししてくれる。何かが変わりそうな予感。

南部芸能で唯一売れてるモノマネの先輩津田さん。新城の大学の友達橋本が今は恋人。大学を出たら実家の農家を継ぐつもりの橋本と別れ話がもつれる。

南部芸能事務所が立ち上がった頃から所属していた手品師の老人。三度結婚し、今は一人。手品で使う鳩が唯一の話し相手。別れた娘が訪ねてくる。

インターバルに話があった番組に南部芸能ではナカノシマトリオが出ることに。当然と思いながらも悔しがる新城溝口の二人に社長は一緒に出ろと言う。新たな風が吹く