この世に未練を残して成仏できない幽霊やオバケは、普通怖いものだが、ここには生前と変わらぬオバケが出てくるユーモアあり、ホロリありなどの話が、六編納められた短編集。

料理屋をしていた父の軽薄な態度を毛嫌いしていた主人公。人がいいために友人の投資話にのり、騙されて借金に首がまわらなくなり、今は人手にまわった父の店に忍び込み、首吊り自殺をしようとして失敗。そこへ現れた父の幽霊。息子が気になって成仏できないでいる。糖尿病のために好きな甘いものが食べられないのが心残りだという父。はじめての父と息子の会話。見ていなかった父の姿。真面目すぎて、騙された息子を叱りもしないで、その方が好きだという父。いつか父の好物をお供えしよう、実家に戻った妻と息子とやり直そうとする主人公

遅く生まれた初孫娘。祖父の不注意で、大雨の中に出掛けて行方不明になった孫娘。今でも一人川付近を捜索する祖父は、そこで孫の長靴を手にする少女と出会い、いつしか仲良くなる。彼女は幽霊。未練は兄ときちんと別れてないから。彼女の話から調べた老人は、三十数年前の彼女の事故を知り、兄を探し当てて話をする。いまでも不注意を後悔する兄を幽霊娘は許し、天国へ旅立つ。

捨て猫を拾い育てた文筆業の男、彼の身近には十数年前に死んだ猫の幽霊がまとわりついている。その姿は彼にしか見えない。幼馴染みが持ち込んだ姪の失踪事件。幽霊猫の指図で探ってみると、なんと狂言だったとわかる。煮えきれない幼馴染みの二人を結びつけて、成仏する猫幽霊。

片想いの彼女に袖にされた直後、事故死した男。彼女が付き合っている男が金目当ての女たらしだと知り、なんとか彼女に伝えたいが。幽霊は話せない。彼の難儀を見かねて声をかけたのは、幽霊を成仏させないで、人を脅かし怖がらせることを教える親方幽霊。人が恐怖を抱くときなら、話ができるかもしれないと。オバケ修行に励む男は無事に彼女に話せるか?

気になったのはそんな数編だ。はじめは馬鹿馬鹿しく思えたが、読んでると、それなりに感情移入してしまい、楽しんだり悲しんだり、なかなか面白い話だった。