自伝である『ぼくには数字が風景に見える』が世界的なベストセラーになった著者。自閉症で、サヴァン症候群であるとともに、共感覚の持ち主という珍しい脳の持ち主。そのダニエルが三作目に出したエッセイが本書。

ロンドンで九人兄弟の長男として生まれたダニエルが、自伝執筆後に様々な読者から共感覚について質問を受けた。彼に言えることは、想像してほしい、ということ。想像力は誰もが持つものであり、それを働かせれば、共感覚についても少しわかるかもしれない。

そんな想像力によって成り立つ学問が数学だとダニエルは言う。文学作品と同じように、数学における想像力とは、純粋な可能性について考えること、だという研究者もいる。ダニエルならばおなじことを、数学が人生をより豊かにする、と。

人生の中にある数学、意識しないと見えてこないが、数の概念で遊ぶと、この世界のとらえ方が大きく変わる、とダニエルは言う。人生の中にある数学について、多岐な分野の話題をエッセイ風に述べたのが本書。

個人的な兄弟のこと、父親や母親の話から、数学の用語の誕生の由来とか、数学者の話。文学者に関する話題や古代ギリシアの哲学者の議論から、小学校でゼロを初めて習ったと思われるシェイクスピア、『戦争と平和』を歴史の微積分として書いたトルストイ、小説の章句を数学の順列組合せのように書いたナボコフ、素数と詩歌の関係を考察しながら西行や芭蕉を引き合いに出す。円周率の暗誦でヨーロッバ記録を更新した様子を描いた話も興味深い。

興味深く、面白いと思いながらも、話題が多岐にわたり、しかも数学とは一見かけ離れた話に見えるものもあり、途中で読み進めるのが嫌になってきて、半分くらいは拾い読みになってしまった。

訳者あとがきでは手放しで誉めているが、私にはそこまでとは思えなかった。しかし、読むうちに脳細胞が活性化するようなエッセイばかりで、文学に携わる作家などから賛辞を受けていると言う。

とすれば私の理解力とか読解力が不足してるのかもしれない。暑さでボーッとなる環境で読んでいたことは、言い訳にはならないだろう。

またいつか読み直してみようか。その前に、自伝をまず読んでみるか。