いいね、人生捨てたものではないと実感させてくれる物語。

舞台はイタリア、トスカーナ地方の海辺の小さな村。風光明媚で観光地になりそうなのだが、交通の便が悪く、取り残されたように穏やかな村。

村を飛び出した男レオが十八年ぶりにアメリカから帰郷した。両親が亡くなり、屋敷と農地を相続した彼は、それらを処分してアメリカに戻るつもりでいた。しかし村同様、辺鄙な地にある屋敷も農地も買い手は見つからない。石造りの山小屋で起居していたレオは、ある日道に迷った観光バスが村に来たのを知り、一計を案じる。昔遊び仲間のフランコやトポと道路標識を動かして、観光バスを村に引き入れる事件を起こしたことがある。

村で唯一のホテル、レストランに赴いたレオは英国人の観光客に村には神秘な場所、奇跡を表すものがあるとだまし、まんまと大金を得る。

そんなときに地震が村を襲う。さいわい死者はいなかったが、奇跡を表す教会のフレスコ画が壁から剥がれ落ちる。有名な画家の筆で金になると思うレオはひそかに持ち帰る。

ホテルの女主人はレオのおさななじみ。悪友のフランコと結婚し、その際レオと殴りあいをして、レオは村を出た。そのフランコも女遊び中に交通事故で死に、マルタには二人の娘が残された。母そっくりの美人のカルメンと、目が不自由なニーナ。

教会の今は年老いた神父はマリアの伯父にあたり、昼飯をいつも運んでいる。

おさななじみの三人と神父、カルメンが抱えた問題が、地震を契機に次第にほぐれていき、最後死を迎える神父の前ですべてが穏やかに平和にまとまる。

最初は劇的な奇跡が起こるかと期待していたが、なんでもない人生、生活の中に奇跡はすでに起きていた。それに気づかされる、心暖まる話だった。

互いの愛を誤解していた男女、村を出たまま記憶喪失で帰らなかった男の帰還、フラりと村に迷い込んだまま住み着いた老人。ただの村にも目を凝らせば、不思議が隠れている。見逃してる真実が隠されている。それも気づけば、奇跡なんだろう。

これは読んだことがない話だな。借りてよかった、読めてよかった。

著者はアメリカ、オレゴンの大学教授、劇作家。小説はこれが処女作。イタリアを舞台にしたのは、生徒に課した面白く短い新聞記事がもとだったそうだ。イタリアを襲った地震で聖フランチェスコ聖堂が被害を受けた。農民がフレスコ画の破片を売ることに当局が悩む記事だった。