予想外に感動した。目次に並ぶ章名がみな数学用語で、どんな展開かと思っていたが。あるいは意味的には関連した言葉なのかもしれないが、今の私にはよくわからない。

十四歳になるマイクは数学嫌い。二人暮らしの父親は天才的な数学者だが、日常生活も息子に頼るほどの世間知らず。肥満が過ぎてるのに、野菜も果物も食べない。

夏休み、その父がルーマニアに行くと言い出す。少年を一人留守番させるのは不安だと、自分も昔世話になった田舎の八十代の大おじ夫婦に預けると。おじが井戸を掘るスクリューを作っていると誤解してる父は、一緒に作業して、数学や工学の勉強をしろと言う。

行ってみたら、息子を亡くしたあとに引きこもったおじいさん、天然ボケのおばあさんが金がなくて、電気も電話も止められた家に住んでいる。目が見えないおばあさんの運転するあぶなかしい車。公園のベンチを事務所にするイケメンホームレス、ダメ男ばかりと付き合う銀行勤めの美少女など、次々と変わり者ばかりだが愛すべき人たちと知り合う。

町をあげて取り組んでいるプロジェクトは、子供と夫を亡くしたカレンに、ルーマニアの孤児院から養子を迎えること。マイクと同じミシェルと言う少年は、写真を見ると印象的で、何かを訴えようとしている。渡航費用などで、四万ドルが必要なのに、集まった寄付は数千ドル。

マイクのおじいさんが作る芸術的な箱を売ればかなり稼げるのに、肝心のおじいさんは身動きもしないし口も聞かない。

病に倒れた両親の看護のために、カレンが去り、プロジェクトの代表にマイクがつくことになる。

自信もないがやるしかない。ネッとで全世界に訴えたり、動画をつくって寄付を呼び掛けたり、マイクは少しづつ目標に近づいていく。家族をなくして、人生に背を向けたおじいさんとホームレスを、怒鳴り付けて改心させる。

得意なものは数学と工学と言う、人生の落伍者で、愛する息子と向き合えなかった父親も、肥満で入院して、退院したとき、はじめて息子と向き合い、互いを知ることができる。
ユーモアや笑いも交えた悲喜劇的な物語だが、最後にはホロリとさせられる。できたらプロジェクトの結果まで描かれていたら、満足できたのだが。人生の絶対値を得た人々はパワフルだ。