よく晴れた日曜、一日がかりでようやく読了。四百ページ近くの大作児童文学。ドイツの作家の作品はどれも長いな。天才少女歌手の数年間を描いた作品。
語り手ボーイは第二次大戦が終わって十年あまりのある日、港湾都市ハンブルクへ向かう船上で、奇妙な男から遠縁の少女のことを本にしないように忠告される。

少女ネリは彼のはといとこの十一歳の少女で、ハンブルグ中央駅近くのランゲ・ライエ通りに、教師の父親と二人で暮らしている。母親ベティーはアル中で、ネリが幼い頃に離婚し別居。近くに母方の叔母ソーニャの営業する居酒屋があり、そこが家庭がわり。両親の離婚にまつわる悲しい出来事のために、ネリは泣くことができない少女だった。

ソーニャの居酒屋を訪れたボーイは、彼女は私と同じで泣くことかできない。今の時代に合っている、と電話で話す黒ずくめの紳士を目撃する。

その夜、スペイン出身の音楽家を目指す若者の演奏で、歌うネリに注目したのが、レコード・プロデューサーのマックス・マイゼ。ネレの天才的な歌声とダンスに魅了されたマイゼは、父親と契約を交わして、ネリの売り出しに邁進する。

最初は生まれた町のアイドルが、ハンブルグの歌姫、さらに北ドイツの誰もが知る歌手になる。彼女の才能と将来を見込んだマイゼは、ネリを海外でのコンサートにまでつれていくようになる。

その過程にはマイゼの背後に、社長の意向が働いていることに気づいたボーイは心配する。かつて、その社長に笑いを売って苦労した少年を知っていて、その話を小説にしていたから。

やがてマイゼはお払い箱にされ、社長が前面に出てきて、世界を相手の売り込み活動をし、ヨーロッパから南米、ニューヨークにまで進出するネリ。南米で知り合った天才少年歌手とコンビで売り出したネリはついに世界的なスターに。

成功と共に、ネリは情緒不安定になり、パニックをおかすようになる。しかも最初の契約により、泣くことが許されない縛りのために苦しむネリ。

笑いを売った少年ティムと再会したボーイは彼の助けで、ネリを救うために動く。

世界的なスターになりながらも、思春期を迎えたネリは孤独だった。そんなネリに三人の若者が求婚する。幼馴染み、スター街道の相棒、スペインの若者。誰を選ぶかは決められなかったネリは、代わりに涙を流すことができた。あの社長の呪縛から解放され、もとからの望みの俳優を目指すネリ。