著者は東大卒、数学オリンピック予選でAランク受賞。『お任せ!数学屋さん』でポプラ社小説新人賞を受賞。
この作品は、著者同様大学では数学を専攻した理系の青年が、出版社に編集者として就職し、悩みながらも奮闘する姿を描いたもの。
最初に担当したかがく文庫編集部では、理系人らしく、生き生きと仕事ができた。原稿をしかるべき著者に書いてもらい、時には書き直しの改稿をお願いし脱稿。図版の手配をし、指示をし、確認。印刷屋へ入稿。一見複雑で煩雑だが、数学の証明と同じく、一つ一つを慎重に丁寧に行えば、結果は出る。

三年近くで仕事にも慣れたところで、桐生は文芸書編集部へ配置転換される。小説など読んだこともないし、数値化できないものはわからない。曖昧さを廃することに専念してきたというのに。

愚痴を言う桐生の話の聞き手は、大学ゼミで一緒だった嵐田。一見がさつだが、ちゃんと考えるべきことは深く考えている。嵐田は同じ出版社の営業。

新しい編集部に行き、最初に知り合ったのは向かいの席の鴨宮。会社では一年後輩だが、文芸編集部では先輩。一見幼い印象でかわいい女性だが、編集会議ではきちんとした一人前の編集者。

仕事が終わったあと、桐生と嵐田は空いた会議室を占領してゲームのようなことをしている。信用できる書店のデータで売り上げの多い書籍二百冊の情報を記したカードを広げ、それを見て思い付くことを統計的に確かめて、新たな本作りの参考にしようとしていた。いつか理系の感性でミリオンセラーを出そうと夢見る二人はリケイ文芸同盟を結んでいた。

理系の桐生には文芸書も、編集部も、部員も、著者などもどれも不可解なことばかり。嵐田や大学の恩師と酒を酌み交わしながら、慰められたり、励まされたり。同じゼミにいても、嵐田は営業だけあって、桐生よりは柔軟に対処できている。

鴨宮さんは感動した小説があり、そんな本を自分で世に出したいと願っていた。桐生と鴨宮は時に恋人になるかのような接近もあるが、桐生の冷たい言葉で疎遠に。担当の作家からのクレームに落ち込む鴨宮を生き返らせたのは、恩師のネットでの発表だった。それに関係鴨宮担当の本がベストセラーに。桐生と嵐田の分析から生まれた本も重刷。鴨宮が別れた恋人と復縁、結婚し、桐生は失恋。作家を目指すと言う鴨宮を応援する桐生。いまだミリオンセラーはないが、それを目指して頑張るリケイ文芸同盟の桐生と嵐田。