昨夜第一部を読み終え、今夜は第二部までかと思いながら、最後まで一気に読んでしまった。

イギリスで歴史の教師をしていたジュリアは、三十年同居していたハリエットの死による失意を癒すために、ヴェネチアに旅する。半年の予定で貸家を借りた。厳格な教師として孤独に生きてきたジュリアは、この地で生まれ変わる。

様々な人と知り合い、そして絵に描かれている青い天使ラファエルと出会う。博学な美術商により、その天使が描かれている旧約聖書外典のトビト記を知る。

ヴェネチアに着く早々知り合った裕福なアメリカ人夫妻、大家のイタリア人女将、さらに文化遺産の修復に携わる双子、ヴァチカンに勤めていた神父など、多様な人たちと知り合い、付き合う。

偶然見つけた修復中の聖堂にあった板絵に描かれていた天使ラファエルに興味を抱き、共産党に入っていたジュリアは、聖書を読むようになる。

はじめは付き合い始めた画商との初老女性の恋ばなしかと思っていたが。画商の目当てがジュリアが知り合った美少年だと気づき、失恋。そして病に倒れ回復してからは、その失恋の痛みを引きずりながらも別のテーマが浮かび上がる。

聖書外典トビト記がもとだと思われるユダヤ人トビト親子の話が挿入されていく。ジュリアの知り合った双子と思われた二人とトビトの話が交互に語られて、現代のヴェネチアと古代のアッシリアが対比的に述べられていく。

古代ユダヤ人社会はソロモン王の死後、南北の二王国に分かれ、北のイスラエル王国はアッシリアに滅ぼされ、住民はアッシリアやメディアに強制移住させられた。

ユダヤの教えに忠実だったトビトは盲い、貸し金の回収の旅に出た息子トビアと同行者アゼリアの旅の話が断片的に挿入されていく。最後に同族の娘サラをめとり帰宅したトビアは天使ラファエルだったアゼリアの指示で父親の目を回復する。

天使ラファエルの起源はユダヤ教より古く、東方のゾロアスター教にまで遡ると考えられる。その証拠にラファエルの傍らにはいつも犬がいる。イエスの誕生を知り祝いをもたらした三賢人もゾロアスターの祭司ではないかと著者は推量する。

孤独な独身生活を送ってきたジュリアは、ヴェネチアで友達ができた上、亡き同居人が残してくれた遺産のお陰で、イギリスを引き払い、ヴェネチアに永住することを決意する。