東京世田谷で、人形店を開く澪。戦前は手広く抱き人形の市松人形を作っていたが、戦後一人娘が戦地から戻った職人を婿にして店の再興を目指したが。できたのは小さな小売店を出すことだけ。息子が跡を継がず、祖母もなくなり、一人店番していた祖父。

広告代理店をリストラ解雇された澪に、入院した祖父は店をすべて譲り渡し、病が癒えるとニュージーランドへ移住。

店は飛び入りで入店した青年富永が手作りのテディベアを売り出して評判になり、さらに既成の人形を修理できることで、小売りではなく修理屋として、なんとか商売ができるようになる。資産家の子供らしく、食には困らないため、バイト代くらいでいいと彼は言う。その代わりふらりといなくなり、何日も休むことをとがめられない。

天才肌の富永でさえ、できないような修理が増えたため、新聞で求人広告をだし、新たに加わったのが、スポーツマンタイプの中年男性、師村。前歴や家族のことは話さず、自宅から道具などを持ち込んで、奥の六畳間を占拠。澪は祖父同様に二階を住まいとしていた。

そんな店に持ち込まれる人形と、その持ち主にまつわる話が展開される。津原さんはホラーっぽい話を書いてる作家だと思っていたが。確かに考えてみると、人形もそんな面もある。

愛着するテディベアを夢うつつではあるが、何度もばらばらにしてしまう少年。彼の願う人形はどんなものか?
まるで生き人形かと思える創作人形。その顔に生き写しの作家の妻と娘。人形の顔に合わせるように整形されたようだ。その顔だけが破壊された修理。どんな顔を望んでいるのか?

生き人形のような精巧なダッチワイフと、その製作職人束前。彼は師村の正体を知っているらしい。

越後村上の雛人形。伝説のトリカブトの名をつけられた側室を模した人形。それを伝える歯科医一家での死亡事件。

師村がかつてチェコで見かけた世界的なマリオネット劇団の話。それがきっかけで、師村の正体が明らかになる。文楽座付き人形師で将来を期待されていたが、阿波の代表的人形師のレプリカを騙されて作らされ、海外に売られたことを苦にして失踪。財産をはたいて、買い戻そうとしたが、最愛の妻をなくしてしまう。

そんな師村を表舞台に戻そうと、澪は店を強引に閉店し、売却するが、買い取ったのは富永の父親で、店を再開することになる。