著者はイギリスの民俗学、妖精学の第一人者だとか。その彼が第二次大戦後オックスフォードに戻り、住み着いたのが、この物語の舞台になったイギリス中南部コッツウォルド地方。妖精や魔女の研究で博士号を受けた。その研究の傍らに書き始めた物語には、妖精物語に対する深い愛着と研究の成果が結び付いている。

物語はコッツウォルド地方東部にあったウィドフォード屋敷から残された家財が運び出されるところから始まる。屋敷の主だったカルバー家の跡継ぎがなくなり、清教徒革命の後のこの時代、そうした屋敷は競売にされた。長年見慣れた残った最後の家財とともに屋敷を出ようかと迷いながらも、屋敷妖精のデイックは残ることにした。

そして新たな家族がロンドンからやって来る。ロンドンで清教徒として商売をしているウィディスン氏に後妻と子供たち。先妻の母親。さらに使用人も何人か。ロンドンでの商売も続け、この屋敷で農場もする。そのために農場頭バーフォードが雇われる。

清教徒である主人をデイックは好きになれないが、先妻の母親は妖精にも理解がある優しそうなおばあさん。自分に箔をつけようと落ちぶれた名家の生き残りであるアンを小間使いに雇った若い後妻。デイックはアンにもバーフォードにも親しみを覚える。

家族には見えないところで屋敷の手助けをするデイック。娘の一人が魔女にさらわれると、近所の妖精仲間を集めて捜索し、助け出そうとする。

農場仕事に魅力を覚える長男ジョエルが父の代わりにロンドンの店へやられると、余命短い祖母の臨終に間に合うように画策したり、ジョエルとアンが相愛だと気づくと、二人を結びつけようと知恵を絞る。貧乏だが家柄のあるアンと、金はあるが身分のないジョエル。かつて、この屋敷の主だったカルバー家が密かに埋めた宝のありかをデイックは知っていた。それを娘の夢に吹き込んで探させる。カルバー家と親戚の一族だったアンが宝の相続人だとわかったとき、主人のウィディスンは正直にそれを認め、アンとジョエルの婚約を許す。何もかもがうまく終わったとき、アンはデイックへのプレゼントを用意する。屋敷の主に感謝されプレゼントをもらったとき、はじめて屋敷妖精は自由になる。デイックが選んだのは妖精界へ入ることでも屋敷にとどまることでもなく、天へ昇ることだった。彼がいなくなっても、その屋敷はいつまでも幸運に恵まれ繁栄した。