サトクリフ初期の作品。前に読んだ『イルカの家』では孤児になった少女の話だったが、こちらは十歳の少年。
時代は16世記、エリザベス女王のもとでイギリスの飛躍する頃。早くに母を亡くし、牧師である父親と、田舎の町で幸せに暮らしていた少年ヒューは八歳で父をも亡くし、おじさん夫婦の農場に養われることになる。まだ子犬のアルゴスと母が好きだったと聞いていた庭にあった青い花のツルチニソウだけを持って。

しかし、よくある話だがおじ夫婦、特におばさんはヒューには厳しく当たり、農場の手伝いをさせては働きが悪いと、満足に食べさせてくれない。

いたずら好きな愛犬アルゴスがアヒルを驚かせたのをきっかけに、犬を殺すと言われ、ついに家出をする。愛犬アルゴスを連れ、大事な鉢植えを抱えて、深夜に飛び出す。

学問好きな父は貧しかったが、貴族の息子アンソニーの給費生となり、彼の世話をすることで一緒にオックスフォード大学で学ぶことができ、牧師になれた。その思い出をよく話してくれた。

自分も将来そんな風に勉強したいと思っていたヒューは、やみくもにおばさんの家を出て、あてもないことから、オックスフォードへ行こうと思う。道も知らず、東に向かえばいつかたどり着くだろうと歩き始める。

途中親切なおばさんに恵んでもらったりしたものの、空腹なまま汚れた姿で出会ったのが、旅芸人の一座。わずか五人の一座だが誰も彼に優しく親切だった。事情を聞いた一座が彼を仲間に加えてくれることになり、一座の一員として、旅をすることになる。一番若いヒューの役どころは、女性役。当時はまだまだ旅をして暮らす人々多くいて、ほこりまみれの兄弟と言われた。
イギリス南部の町町を旅しながら、宿屋の前や市で、聖人潭などの芝居をする。集まった金は平等に配られ、金がないと空き腹で移動。彼らに優しい人ばかりでなく、時には追い払われたり、警官に捕まったり。

それでも楽しく愉快な旅をしていたヒューは、ある町で紳士の訪問を受ける。亡き父が仕えたアンソニーだった。今は家督を継ぎ、近くの屋敷に住んでいる。父の面影を見て声をかけてくれた。事情を知ると、息子の給費生として、暮らさないかと言ってくれる。

仲間と別れることや、愛犬を連れていけないため、一度は断ったが、話を聞いた一座の人たちの勧めもあり、亡き父の思いも汲んで、引き受ける。かくしてヒューには新たな家族と夢が得られた。

心暖まる話だな