久しぶりに森沢さんのハートウォーミングな話を読んだ。

『津軽百年食堂』『あなた』『虹の岬の喫茶店』などを読んで、いいなあと思った作家。この作品は前から図書館で見かけていて、タイトルも気になっていたが、なかを覗いたとき目に入ったのが、性描写だったので敬遠してしまった。今から思うと損をした気分だな。

両親に捨てられ、父方の祖父母に育てられたミーコという、一人の女性を彼女を取り巻く人たちの視点から描いた七章からなる。

成人して、娘幸子、チーコを一人で育てるミーコは風俗嬢をしている。最初の章はその客ナベちゃんとの交流を描いている。ソフトなSMの女王役を務めるミーコ。最初にこの本を覗いたのはたぶんラブホテルでの描写だったか。

第二章では祖父母に育てられた幼いミーコが描かれる。虐待に近いしつけをする怖い祖母と優しい祖父。子供を捨てるような息子にした反省からしつけに厳しい祖母の心にも深い愛情があった。アメとムチで一人でもしっかり生きていけるようにと育てた。さらに彼らは貴重な生きる指針をミーコにくれた。「人にありがとうと言ってもらえることだけをこの手でしなさい」「毎日小さな幸せ、楽しみを見つけてそれを宝にしなさい」。指し物師の祖父は桐の宝箱を、祖母は母の形見の手鏡をその蓋の裏に張り付けてくれた。学校の帰り道で拾った一見つまらないものでありながらも、ミーコには宝物と思えるもの。宝箱を開ける度に一番大事な宝物であるミーコが見られる。

三章では学生時代の友久美、四章では保健室の先生奈々、五章では風俗に勤めるミーコの大学生の彼氏、六章では風俗店のオーナー竜介、最後の七章では、成長し、結婚式間近な娘チーコと母のミーコの交情が描かれている。読んでいて、思わず泣きそうになってしまった。

どの章の主人公たちもそれぞれの家庭事情や環境を持っていて、愛情に飢えている。似た者同士なのかもしれない。だから同じようにミーコに引かれ、甘えてしまう。

最後の章では、結婚前の最後の母と娘のクリスマスが描かれる。思い出の写真を渡そうとパソコンに記録するミーコ。母の手帳を覗き見たチーコは自分が生まれた年から毎年買われた手帳に、ミーコの宝物が毎日記されているのを見る。それはすべてチーコの言葉や表情などだった。ミーコの一番の宝はチーコ。
無事に二人が生きてこれたことがなんか幸せな気持ちにさせる。
森沢さんの作品ってやはりいいね