ウェールズ生まれの女性作家。長く教職を勤めたあと、子供たちの独立を機に退職し、長年の夢だった児童文学を執筆。この作品が処女作。

場末の古道具屋を営む父親に言われて、町のあちこちからがらくたを拾ってきたり、時には盗みをし、それでも満足に食事にもありつけず、風呂にも入らない主人公の少年トッド。しかも彼は昔の記憶を失っている。たまにふっと浮かび上がる映像は霧のなかにいるみたい。

ガイの祭りでは、子供たちはガイに見せかけた奇怪な人形を作り、ハロウィンのように家々を回って小遣い稼ぎをする。それを真似て、トッドは端切れなどから不格好な人形をつくったら、なぜか普通とは違い、女性に見えた。それが幸いして小遣い稼ぎができたトッドは、それを元手に家出をする。

大事にしていたロケットを人形の心臓にとり付けたら、人形が話をするようになる。丘を越えてはるかかなたへ、緑色のドアの家へいきなさい、と。

人形をつれて旅に出たトッド。人形が話してくれるおとぎ話。浮浪児のように、こそこそし、食べ物を盗み歩き続けるトッドは、記憶の底から断片的に浮かび上がる映像を見、声を聞く。

人に無視されたり、親切な人に風呂に入れてもらったりして旅を続けるトッドは偶然、飛行機に密かに乗り、楽園を訪れる。妻と共に失いかけた娘を取り戻した金持ちが、子供たちを郊外の屋敷に呼び寄せパーティーを開いていた。集まった子供たちに紛れ込んでごちそうを食べ、遊び、夜は納屋で過ごすトッド。優しい女性アナベラの世話を受けるが、クリスマスと大晦日が終わると、居づらくなり旅に出る。彼を心配するアナベラが毎週ハガキを出してと金もくれた。

記憶にはない何かに導かれて、目的地に向かうトッド。川を渡る船賃のために人形の心臓につけたロケットを手放し、人形を川に流し埋葬する。
やっとたどり着いた海辺の町の丘の上の一軒家。緑のドアについた魚型のノックをたたくと、初老の婦人が出てくる。何か言葉がわき上がりそうだ。おばあちゃん、叫んでドアのなかに倒れ込むトッド。
長いこと寝付いたトッドが春を迎え、元気になると、祖母は事情を話してくれた。
未成年でトッドを身ごもった母親は、父親と祖父を海で亡くし、祖母とトッドを五歳まで育てたが、流れ者と子供をつれて家を出た。その男が古道具屋になった。実の父親ではなかった。やがて彼と祖母が世話をしてくれたアナベルに手紙を書き、彼女が会いに来るという。もうすぐ中学に入る