ようやく読了。ロシア民話風の童話。著者は生前に第一部しか出版できず、二部三部は政治批判風の記述があるとして出版されず、死後三年、ペレストロイカの時代になって、まとめて出た。

第一部の新しい家に来たクシカでは、新しい団地に引っ越してきたナターシャ一家にクシカが来たところから始まる。両親が荷物を取りに行っている間留守番をしていた少女はホウキを手にとろうとしてびっくり。その後ろに不思議な生き物がいた。小人。はじめは互いに怖がっていたのに、話をしているうちに打ち解ける。

彼はクシカと名乗る。昔の屋敷には家の守護神と言われる家の精がいて、ペチカの下で暮らし、農民の衣服を着た白髪で長い髭のおじいさんだった。

でもクシカはまだ子供、薄汚れていたが、ナターシャが風呂で洗ってやると、金髪の少年だった。来客があると戸棚や冷蔵庫に飛び込み、自分の部屋だと思ったと弁解する。引っ越し祝いのケーキを差し出すと、ひとつか二つのつもりが、半分以上食べてしまい、残りは友達にやるんだと言い出し、ナターシャは母親への言い訳に悩む。

そんなクシカが語る昔の冒険談が、第二部森へいったクシカと、第三部バーバ・ヤーガのところへいったクシカで語られる。

ロシアの昔話でなじみの森の精わ魔女バーバ・ヤーガ、沼の精キキーモラ、川の精ルサルカ、水の精などに出会ってのクシカの冒険が描かれる。

冒険から戻った家はもとの家ではなくて、新しい家だった。その時出会ったのがナターシャの曾祖母。百年あまりたち、川のそばのきれいな家はなくなり、川は地下に流され、団地ができている現在。時代も土地も変わったが、生きている家の精を描くことで、過去のロシアへの懐旧だけではなく、昔話をよみがえらせようとしている。さらに文明の発達で忘れがちな自然の豊かさを忘れないようにしようということ。

私には昔話というよりは妖精物語に思えたが、なかなか楽しい読み物だった。