ホラーみたいな怖い場面から始まり、これでも児童文学かと思わされるが、主人公が児童だからそうなのかな。イギリスとアメリカの代表的な児童文学賞、カーネギー賞とニューベリー賞をダブル受賞した作品はこれが初めてとか。

始まりは殺し屋が両親と七歳の娘を殺し、のこる幼い男児を殺そうとする場面から始まる。しかし、なぜか子供部屋にはいない。ベッドを乗り越え、階段を降り、玄関から外へ出たらしい。住宅街の向こうには墓地のある丘がある。

墓地に迷い込んだ幼児を見つけたオーエンズ夫妻の幽霊は、子供を持つことがなかったため、その子を育てたいと言い出し、墓場の仲間の会議にかけられる。幽霊では食べ物を与えることができないが、墓地に滞在することを許されていた流れ者のサイラスが後見人として食事や教育の面倒を見ることになり、幼児を墓地に受け入れることになる。誰でもない、ノーボディと名付けられた子はボッドと愛称で呼ばれ、普通の人間には見えない幽霊たちと話をしたり、様々なことを教えられて成長する。さらに幽霊のように壁をすり抜けたり夜目がきいたり、さらには意思で姿を消すことができるようになる。

墓場に来た少女と知り合い、墓場を探検してグールやナイトゴーントという太古からの怪物の世界を垣間見たりする。

成長して、外の世界へ出掛けられるようになると、あの殺し屋が嗅ぎ付けて、殺しに来ることになり、最後は墓場を舞台にして、四人の殺し屋を相手にして、幽霊たちの助けを得て、ボッドは彼らを撃退する。しかし、一緒にいて彼に助けられたかつての少女は、そんなボッドが怪物に見えて遠ざかる。

殺し屋たちは大昔からある組織のもので、予言で伝えられてきた生死の境を自由に行き来できる少年を抹殺するために活動していた。期しくも結果はボッドによって実現された。
十五歳を迎えたボッドは一人前になったため、幽霊を見ることも話すこともできなくなり、後見人のサイラスとも別れ、ひとり外の世界に旅立つことになる。

著者はキプリングの『ジャングルブック』を愛読していて、それを下敷きに思い付いた作品らしい。狼の代わりに幽霊。一見、ありそうもない気もするが、読んでみると、なかなか読みがいがあり、考えさせられることもあり、いい作品かも。