著者のアラン・アルバーグはイギリスの小学校の教員から作家になり、奥さんのジャネットさんが挿し絵を描いて、夫婦共作の作品がいくつかあるとか。

子供の頃お気に入りの本のタイトルがこのタイトルで、外観の装丁は覚えているが中身は忘れてる。だからタイトルだけ借りて作り上げた話。

工場で大量製作された熊のぬいぐるみのひとつが味合うことになる数々の顛末と出会った人々。戦前のイギリス、とくに子供たちの遊びが活写されていて、興味深いと共に、主人公の行く末や、愛されない性格がどう変化していくか、興味津々だった。最後にハッピーエンドを迎えてよかった。ぬいぐるみは持ち主に名前を与えられて、大好きと言われたときに、愛される存在になる。またテディベアは首に赤いリボンを結ばれた時に生まれるのだそうだ。

主人公はぬいぐるみ工場のベルトコンベアを流れる材料が、次々と手を加えられて姿ができる。茶色のフラシ天という生地を毛皮に、ビロードかフェルトで前足を、丈夫な黒糸で鼻と口を縫う。ガラス玉の目が一組、頭や腕をボディにつけるための円形のジョイント、体内に詰める綿や木屑。鼻と口を縫い付け、目の位置を決める仕上げ作業が一番大切。それによって表情が変わり、くまの性格も決まる。

主人公はそこが少しよくなかった。うぬぼれやでわがままな性格。だから見たものに可愛がられないで数奇な運命をたどる。

最初は工場の最終検査ではねられて廃棄処分になるところを、掃除婦のおばさんが勝手に持ち帰る。
歌が好きなおばさんには四人の子供がいたが、結果的には可愛がられず、いたずらされて惨めな格好に。くずやに払い下げられて、あわや紙の原料にされる間際に、ベルトコンベアから落ちて、難を逃れる。製紙工場の支配人に拾われたものの、靴磨きにされ、さらに彼の家の犬に噛みつかれぼろぼろに。責任を感じた支配人の奥さんに人形の病院に連れ込まれ、生き返る。戦争が始まり、屋敷も爆撃で破壊。拾った少年が、妹の誕生日のプレゼントにしたことで、ようやく真の持ち主、安住の場を得る。よかったね、一言声をかけたくなる。

正直、性格的にはやはり好きにはなれそうもないが、不幸を経験し、他人の苦しみや思いを理解することで性格もまるくなる。ぬいぐるみも人も同じなんだ。愛し愛される人にめぐりあう、それが人生の目的かな

訳者の井辻さんもテディベアのフリークだとか。協会もある。