イギリスの作家による不思議だが、面白い作品。訳者は巻末で、現代のアラビアンナイトという。

父の死後、古道具屋の店を引き継いだものの、商売に慣れてない母親は金に困っている。図書館で知り合った奇妙な男を娘のエイルサが連れ帰り、店員として働くことになる。

素性もわからず、名前も偽名みたい。それでも給料もなしで、店に住み込むという男になんか説得されたよう。
たまに訪れる客に、目当ての古道具にまつわる来歴話を聞かせて、夢中にさせて買わせる。そばで聞いてるエイルサ母子もでたらめだとは思いながらも、いつか引き込まれている。

せっかく手に入れた代金を勝手に使い、男はフリマで、新たな古道具や古本を仕入れてくる。とにかく話をするのがうまいだけではなく、本を読むのが何より好きな男。

男の語る世界各地を舞台にした様々な話。それだけでも興味深く、楽しい。そうして売れていく古道具が十あまり。それぞれがひとつの章で語られる。

最初はうさんくささを感じていた男に、母子は次第に魅了されていく。それがかえって母親を不安にさせて、ついに彼に解雇を言い渡す。いったい彼は何者だったのか?でたらめだと思っていた来歴話だが、隣家の主人の話からでたらめではなく、実話だったとわかる。しかもその直後に、エイルサは『本の国から来た男』なる本の中に、彼と同じ風貌の記述を見つける。彼は実在の人ではなかったのか?でも話を聞いて、古道具を買っていった人々はいる。頭が混乱するエイルサに母は断言する。彼が実在しなくても、話が真実なら答えはひとつだと。

そのあとに、『不思議を売る男』なる本をタイプで打っている。いつのまにか登場人物たちが勝手に出ていってしまい、もうどうしようもないと嘆く。でも結末を少し変えたら、新たな展開が生まれるかもしれない。そう書いて姿を隠した作家。
男はふたたびエイルサのいる世界に戻っていったのか?結末は書かれてないが。いつかそんなことを祈る自分に気づく。

話とか物語を聞いたり楽しんだりすることを再認識させてくれる。興味深く、含蓄を感じさせる、楽しい作品だった。

日本ではじめて紹介された作品というが、十数年前の翻訳。著者の他の作品も今は紹介されているのだろうか?あれば読んでみたくなる