佐伯泰英さんの時代小説シリーズのひとつ、鎌倉河岸捕物控第24巻。前回で金座裏の第十代を引き継いだ政次にも男子ができ、そのうぶすな参りを済ませた。

今回の事件は二つ。ひとつは金座裏の面々が騒いでいる横で、まんまと食い逃げした二人組に関わる事件。食い逃げが鮮やかだったこともあり、調べてみるとあちこちの店で起こっている。いつものように政次のかみさんになったしおに似顔絵を描かせて、見せてみるとやはり同一犯。そうするうちに客の胴巻きを盗み、大金を得たり、殺人まで起こすことで本格的な捜査に。古着屋で衣服を変えたときに漏らした言葉から、居場所を探し発見。漏れ聞いた言葉では数人の仲間が落ち合うらしい。奉行所で調べてみると、お尋ね者の盗人一味。狙いの店を張り込み、ついに捕まえる。後日潭として被害者の金貸しの悪辣さとその結末が描かれていた。

もうひとつは吉原の高尾太夫と政次の関わりと、そのために高尾太夫の危難を探索し、無事納めるまでの顛末を描いている。

政次は呉服問屋の将来を見込まれた手代から、一転、金座裏の御用聞きの跡を継いだが。実は長屋住まいの飾り職人の息子。その実父は今まであまり目立たなかったが、今回は少し表に出てきた。いつもむっつりしてるのにはじめての孫を見ると女房をからかったり冗談を口にしたり。初孫は格別なんだ。それと事件の関わりのきっかけになるのが、その実父の作った飾り物。十数年前、旗本家の娘の嫁入り道具として頼まれたものを届けるとき、跡を継がせるかどうか迷っていた父親はなぜか政次少年をつれていった。嫁入り支度で混乱した館で一人遊ぶ妹娘の幼女。政次はその相手を勤めてやった。その時になにかあったら私が守ってあげると約束した。長じて忘れていた幼い約束。九代目の代わりに吉原に出向いた政次は今が全盛の高尾太夫を望見。見たことがある気がするが思い出せない。太夫も政次のことをそばのものに聞いたとか。
思い出すのを諦めたときに、ふっと思い出す。生まれた長屋を訪れ、遊んでいる少女を見て思い出す。あの姫様だと。政次を覚えていた太夫からの依頼で密かに探索し、無事解決するまでの顛末。最後に見た吉原での後見の月が鮮やかに思い浮かぶ。

華やかではないが、しみじみとしていていいなと思う作品だった。読了すると、もう次が読みたくなる。佐伯さんの頭の中にもまだ生まれていない物語が早く読みたくなる。