古本買ってから長いこと積ん読状態だったが、図書館で続編あるのを知り、予約して手にしたものの、やはり正編から読んだ方が楽しめるかと、昨夜から読み始め、ようやく読了。

しばらく児童書やファンタジーばかり読んでいたから、大人の小説を読むのはしんどい。しかし読み概があり、主人公に魅力があるとやはりいいな。

タイトルのヤッさんはホームレス。しかし通常のホームレスと違い、身だしなみには気を使っているし、髪も髭もちゃんと手入れしている。ホームレスながら食通で、築地市場内のお店にも、名店と言われる銀座周辺の料理屋やレストランにも顔がきき、信頼されている。食材を商う市場と調理して客に出す店との間を取り持つ、いわばコーディネーターのようなことをしている。だからホームレスでも卑屈にならず誇りを持って生きている。

六編の連作短編集になっている。語り手の私タカオが段ボールにくるまって銀座のビルの谷間に寝ているところを、蹴飛ばされたところから始まる。蹴ったのはもちろんヤッさん。段ボールなんてホームレスの堕落たと。身の上話をして同情を引こうとしたが、二度と口にするなと叱られる。築地に連れていかれ、あちこちの店での貰い物食べるだけでも腹は一杯になる。ついで腹ごなしにジョギングして、ホテルのレストランの賄い飯。そのあとは筋トレまでやる。そして仮眠。そんなヤッさんに魅せられて、弟子のようについて回るタカオが一人立ちして、社会人に復帰するまでのことを描いている。

最初の編ではいっぱしの食通になったつもりで雑誌記者に利用される失敗を。二編目では函館からそば職人になりたくて家出してきた女子中学生ミサキとの出会いとその顛末を。三編目は老舗の洋食屋の店主が大手チェーン店に騙されて起こした籠城事件。ヤッさんの働きで解決する。四編では出入り御免の築地で出入り差し止めを食らう。築地市場移転問題による対立が原因。五編ではヤッさんの師匠に当たるホームレスの危難を救うために湘南に向かう。最後の六編では、ミサキの知り合いのレストランの危難をタカオが単独で解決。その直後市場で事故に遇い入院。多くの見舞い客があり、感激する。しかもヤッさんのお膳立てで、ミサキの店で修業して、夫婦で暖簾分けという将来も見えてくる。社会人への復帰のためのリハビリは終わりだと。