ル=グウィンの最新評論集。2002年以降のスピーチ、講演、エッセイをもとに、ファンタジーに関する論考を集めたもの。動物文学と言われるものを著者はファンタジーに含める。ハリー・ポッターシリーズの人気がファンタジー・ブームを引き起こした頃にできたもの。彼女は必ずしもブームを手放しで誉めてはいない。過去にも優れたファンタジー作品があって、それらを再認識させたことの功は認めても、それがはじめてだと誉める批評家たちの無知と偏見に怒りを向ける。

最初のスピーチではファンタジーに前提されているものとして、登場人物として白人、舞台は中世ヨーロッパ、内容は善と悪の戦いというものを挙げて、辛辣に批判している。ファンタジーは単に逃避や願望充足ではなく、善と悪の違いを表現し、検証できる文学。想像力を羽ばたかせて、あらゆる可能性を示し考えさせる文学だと。
動物文学についての講演をもとにした論考では、それをより動物に近いものから人間に近いものへのスペクトル上に、作品を配置し、その三類型を、いくつかの作品を提示して論考している。動物たちが話す、動物の伝記、動物小説と言われるものを動物よりの類型として、動物が主人公の作品として、かなり多くの作品を挙げて扱っている。ついで人間と動物がかかわり合う類型。最後に動物を人間の代わりに描く寓話とか心のかけらとする類型。人類が歴史と共に失ってきた他者としての動物の存在や関わりはなくなったわけではない。見えなくなったそれらを想像力によって描いた作品の存在は人間がより広い世界を理解し関係を持つために寄与する。

ヤングアダルト文学に関する講演では、自著『ゲド戦記』について述べていて興味深い。
さらに彼女は自分が書くファンタジーにはメッセージはないという。物語の意味は、言語そのもの、読んでいくにつれて物語が動いていく動きそのもの、言葉にできないような発見の驚きにあり、助言ではないと。芸術作品は抽象的なわずかな言葉に要約できるものではなく、感情や体そのもので理解するものだと。たとえ子供向けに書かれたものであってもそう理解しなければならないと。本を開く子供が、新しい世界のドアが開くのを感じ、そこで何が見つけられるかとわくわくできたらいい。

わかりやすく、なかなか示唆に富む論考で、彼女の以前の評論やエッセイも読んでみたくなる。さらにやはり、ゲド戦記かな