いまや日本の代表的なファンタジー作家の一人と言える上橋奈穂子さんのエッセイ。とはいえ自身で執筆したわけではなく、瀧晴巳という方が彼女にインタビューしてまとめたもの。彼女の勤める大学の研究室で三時間に及ぶ語りを四回とは!

その評判や評価は前から聞いているものの、私はいまだにその作品を読んだことがない。読んでみたいと思わないわけではないが、シリーズの長さに圧倒されて、なかなか手にとれないでいる。むしろ学生の時の方が読めるんだろうな。

最初に登場する父方の祖母に聞いた昔話。口承伝承と言われる話は一見、動物が口を聞いたり、怪物が出たりと日常とはかけはなれた話に思えるが、それでいて話の深いところで、人間の琴線に触れるものがあり、繋がりがある。だからこそ長い年月を経て語り伝えられてきた。彼女の作品は異世界とかを舞台にしたものが多く、ハイ・ファンタジーと呼ばれるものだが、やはりそこにも、生きている人々の実感が描かれているのだろう。だからこそ幅広い人々に共感を持たれ、読まれている。

彼女の半生をたどりながら語られていて、興味深いし、知らなかったことも多い。私が一番興味を覚えたのは、作家としての彼女ではなく、人類学者としての彼女を描いているところ。作品が評判になってからも執筆に専念しないで、学究生活もし、フィールドワークにも出掛けている点だな。私も一時アポリジニには興味を覚えたことがあるが、いかに皮相的な、一時的な興味半分かと反省させられた。彼らも生きている同じ人間なんだ。

巻末に読書本リストがあり、最初は圧倒されたが、考えてみれば、本好きならそれほど驚くほどのものではない。挙げられている作品も特別変わったものはない。私も小学校の頃は図書館の本棚に並んだ伝記の数々を読んだ覚えがあるし、椋鳩十の動物小説も結構読んだ。瓜坊と呼ばれるイノシシの子供を描いた作品の読書感想文で金賞を得たこともある。ただしそれを私はあまり自慢できない。巻末の解説文を参考に書いたので、盗作とまでは言えないが、自分の手柄にすることができなかった。中高生の頃は男女の違いか興味の違いか、私はファンタジーではなく、海外のミステリーにいったから上橋さんとは違うな。彼女が多く読んでるサトクリフに再度挑戦してみようか。ケルトに興味を覚え、一時読もうとしながら挫折した。それにトールキンはやはり一度は最後まで読みたいな。

上橋さんの作品もいつか挑戦しようか