なんともふしぎな物語。まるで絵本を読んだような、大人には馬鹿馬鹿しく思える話なのに、いつか夢中になってしまう。主人公の少女と一体になって、ふしぎな町のきちがい通りの奇妙な人たちを見て楽しんでいる。

主人公は六年生のリナ。夏休みに、父の薦めで、そこへ行く。静岡から電車に乗り、東京と仙台で乗り換えて、とある田舎の駅につく。迎えがあるはずと聞いていたが、誰もいない。家出かと思われて、駐在さんに話を聞かれる。霧の谷へ行きたいと答えたが、知らない。調べてみると、昔の銀山のあった廃村付近らしい。かなり山奥。町外れの神社の脇道を上っていく。そこまではリヤカー付きの耕運機に乗せてもらえる。

山道をしばらく歩くと霧の谷という標識。夏休みの宿題がつまったカバンと共に、父からもらったお気に入りの傘。白地にピンクの水玉で、持ち手にはピエロの顔がついている。座って休んでいたら、風によって傘が飛ばされる。追いかけていると、辺りに霧が。気づくと山道が石畳に変わっている。霧が晴れて現れたのは、六軒の洋館が立ち並ぶ。本屋、船の道具屋、おもちゃ屋、おかし屋。その向かいに庭のある大きな家があり、傘のピエロがいる。

そこが下宿屋のピコット屋敷。女主人の、小言ばかり言うおばあさんが訪ね先だとわかったが、愛想がない。
ここでは働かないと食べられない。だからリナも働かないといけないと、近所の店へ手伝いに行かされることに。

下宿人は発明家のイッちゃん。洗濯や掃除をする、お母さんくらいのキヌさん。コックのジョン。そしてねこのジェントルマン。食事はみな一緒に食堂で。このあたりは、気ちがい通りだと皆は言う。
三日休んで、月曜から働きに出る。ナータの本屋、トーマスの船の道具屋、シッカの瀬戸物屋、マンデーのおもちゃ屋、そしてトケのおかし屋。主人だけでなく、飼っているオウムやおとなしいトラ、ひょっとこ面をはずさない子供がいたり、通りをケンタウロスや小鬼が通る。はじめは面食らったものの、やがて住人たちに親しみ、好きになっていく。仕事をすることで、リナ自身しっかりしてくる。

別れの時、来年も来たいと言うリナに、いじわるなピコットばあさんは迎えがわりの傘を返すように言うが、皆からのお土産だと渡されたふくろのなかに、傘も入っていた。これが一番嬉しかったリナ。

少女が別世界に入り、働かされる。宮崎アニメのあれに影響を与えたと言われる作品だ。よかったな