久しぶりにこころよい作品に出会った気分。

東京下町にある寂れた商店街、明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある店。看板もなく、一見民家だが、入り口に藍染で白くさとうという名前が白抜き去れている。

三代前は和菓子屋で、戦後砂糖が貴重な時代、その名前で人を呼び賑わった店。二代目はサラリーマンになり、店は奥さんが引き継いだもの、やがて店終い、三代目の男子が一人住まう家だった。七歳で目が見えなくなり、盲学校に通ったこともあるが、父親が出ていき、母親も出ていき、独り暮らしをしていた。

そんなある晩、飛び込んできた男。やくざまがいで、何か事件を引き起こし逃げている様子。店主は、まだ店はやってない頃だが、動じることなく、穏やかに彼に接し、眠り込んだ男に毛布をかけ、そばで点字本を読んでいた。目が覚めた男が、落ち着けたのか、荷物を預けて出ていった。二週間後には取りにくる。来なかったら好きにしろと、名前を名乗る。三日後ラジオのニュースで、その男が国会議員傷害で捕まったと。使われた拳銃が見つからないと。

それがきっかけで店主はあずかりやという商売を始めた。客が持ってくるものをなんでも預かる。一日百円を前払いすれば期日まで預かるが、それが過ぎたら好きにすると。

金を出してまで預けるものがいるか?最初は不可解な気もしたが、ありえなくもない。手元に一時でも置いておきたくないもの、家族には知られたくないもの。頻繁に客はないが、需要はある。店主は盲目だから、見られることはないし、見えないのに、取りにいけば間違いなく返してくれる。

ものがたりはそんな店に出入りする人々を描いている。しかも語り手は短編ごとに違う。最初がのれん、預けられた自転車、和菓子屋時代から店頭にあるガラスケース、ついで昔の女客、預けられたネコと、次々と変わるが、なかなか面白い。

大抵の客は一度きりだが、リピーターもいれば、子供の頃利用したものが何十年ぶりに訪れたり。店も店主のたたずまいも変わることなく、ここだけ静かな時が流れている。

大事件には縁がない、下町に住む人々のささやかな事件や葛藤が描かれているだけだが、なんか懐かしい暖かいものを感じる作品だ。
昨日の本に比べたら断然いい。児童文学っぽいが、やはりいい