久しぶりの日本の現代小説。さすがに原さんの小説は面白く、少ししんみりさせる

高校中退で中華料理屋で住み込みの見習いをしていた勇人は一念発起、安アパートに引っ越し、独学で高認を目指すことにした。昔は大検といった高校卒業程度の学力を認定する試験。これがあれば大学受験ができる。

きっかけはつまらない。付き合ってた子が大学生とも付き合っていると聞いて、思わず一年後には大学に入ると言ってしまったから

アパートは取り壊しが決まっていて、それまで格安で借りることができ、二階の五部屋が使える。引っ越しを終え、勉強にかかろうとしたら、下から奇妙な騒音が。

一階の四部屋は別の下宿人がいるとは聞いていたが。髭面の男が肉の塊に鉈を振るっている。還暦の男は自家製のヴルストを作り、いづれは店を開くつもりだと。ヴルストはソーセージのこと。

勇人は勉強嫌いだったので、いざやりかけても何から始めるか戸惑い進まない試験勉強。下からは相変わらす騒音があり、のちには薫製のいぶし煙が二階まで上がって来て家事と間違える。二人であれこれ言い合った末に、勇人は彼の手伝いをすることになる。

なんとか食べられる試作品ができた時、放し飼いの養豚で材料の肉を提供してくれた茨城の飛田さんに食べてもらうと、肝心な何かが抜けていると。本場ドイツのを食べたことがあるかと詰問されてしまう。

そんなことから髭親父は勇人と共にドイツへ。本場のヴルストを食べて目が覚める。生肉の味わいが残るヴルストは格別だった。材料からして違うから、同じものはできなくても、生の肉の味をできるだけ残したヴルストをつくろうとする。

その間に髭親父の娘が現れたり、その娘がドイツでパン屋をしていることがわかったり、あれこれあるも、勇人はなんとか試験にも合格する。

アパートの大家の息子と髭親父は友人で、ヴルストの店を開くためのアパートの立て替えだった。しかも店を開くことは髭親父の亡き妻への贖罪でもあった。その計画が資金不足で頓挫しかけたとき、援助を申し出たのは彼の娘だった。ドイツの店を売却して、父と二人でヴルストとパンの店をやろうと

高認に合格した勇人は大学には行かずに、ヴルスト職人になるためドイツに行くことを決意。帰国するまで待ってほしいと頼んだ彼女は、なんと一緒にドイツへ行くと。

若者が本場で職人修行する。大変だが、反面羨ましいと思ってしまう