朝晩の寒さが応えるようになってきて、先日までの暖かさがなつかしくなる。人間なんて勝手なものだ。

自治会役員のメインイベントの一つ、市民運動会も優勝という有終の美で終えた。役員なんて言っても、採点種目に出場する選手にゼッケンを渡すのと、終わったときに記念品を手渡すくらいで、その他の時間はただ立ち尽くしているだけ。それだけでも年だからか、今ごろになって疲れを覚える。

夕食後は動くのが面倒で、芸能人によるカラオケのコンテストを漫然と見ていた。時々懐かしい歌が聞けて、それなりに楽しめた。そのためか、ふと頭にある歌のフレーズが流れてきて、無性に聞きたくなる。そういえば、以前レンタルCDをパソコンに取り込んで、CDに焼き付けたことがある。しばらく聞いてなくて、目的のCDを見つけるのに手間取るが、先程やっと見つけ、今聞いている。

私が大学に入った頃のアイドル歌手。天地真理、小柳ルミ子と同じ頃にデビューした沖縄生まれのアイドル歌手の走りとも言える南沙織。

頭に響いたフレーズは「色づく街」という秋の歌の一節だった。『リコール』と題する二枚組のベストアルバムから20曲だけをコピーしたCD。

少し舌足らずな発音の言葉に当時はグッとしてしまった。同じ下宿にいた奴はアグネス・チャンが好きだった。司馬遼太郎が好きで、モルモン教会に出入りしていた。卒後都市銀行に入り、紛争中の中東に行ったという噂を聞いたが。卒後就職もせず、自営業に従事した私は、学生時代の数少ない友達とも離れてしまい、いつか音信もなくなった。いまさら後悔はしないが、しかし時に寂しく思える。
そんな昔のことがふと思い出させるのも、秋だからかな。肌寒い夜だからか。

南沙織が好きだったのは、実は歌が好きだったから、というよりは、当時恋していた女性にどことなく似ていたからだった。同じ年なんだから、彼女もいっぱしの老人、おばあちゃんになっているのだろうか。今は60代なんて、まだまた元気な人もいるが、彼女はどんな様子なんだろう。時にふと思いはするが、会いに行きたいとはもう思わない。

七河迦南さんのミステリー短編集『空耳の森』を読み始めた。夕食前に一編だけ。もう少し読むつもりだったが、今夜はもう寝よう。目が疲れた、体が疲れている。それ以上に心が本にではなく、昔に、あの子に向いてしまい、読めそうにない。
南沙織の歌が終わったら寝よう。夢のなかであの人に会えたらいいな。