魔法使いの物語と言えばいいのか。読みごたえがあり、興味深い。
魔術は土地から生まれ、各地に独自の魔術が発達してきた世界。一人の男がそれをすべて身に付け、強大な力を持ちながら、自分が作り上げた町に住んでいる。

首都エズキウムは大陸の中継地点にあり繁栄し、回りの国々からこの千年侵略の危機にさらされながらも、一度も屈服したことがない。魔道師長アンジストが治めている。千年近くの齢を重ねる強力な魔道師。町を囲む外壁には生きたまま埋められた人々がおり、その思いが魔術により外に放射されて難攻不落にしていた。

近郊のキーナ村に住む年老いた女魔道師エイリャに育てられている少年カリュドウ。生まれたときに両手と口のなかに三つの石、月石、黒曜石、真珠を持って生まれたことから、実母に気味悪がれ、エイリャに引き取られた。幼い頃から本を与えられ勉強していた。

そんなある日、エイリャを訪れた魔道師ケルシュ。さらに彼を追って現れたアンジストによりエイリャは殺され、ケルシュは逃げてしまう。少年であるカリュドウは無視されて生き延び、いまわの際のエイリャの指示で、隣の国パドキュアへ。

目の前でエイリャを殺された虚しさに生きる力の湧かないカリュドウは、エイリャの知り合いに助けられ、復讐という生きる意義を見いだす。そして連れていかれた写本師の工房。

周辺諸国の魔術を習得している世界一の魔道師アンジストに打ち勝つために、魔法が使える写本師、夜の写本師になることにしたカリュドウ。

この千年の間に、アンジストは三人の女性を殺し、彼女らが持っていた女性にしか持てない神秘的な力を獲得して無敵な存在になっていた。そしてその三人の女性がカリュドウの前世だったという話が挟み込まれて語られる。どの時代にもエイリャやケルシュも仲間として別の人物で登場する。それだけ強い絆で結ばれていたのだろう。

最後にアンジストの素性まで明かになり、カリュドウは復讐を果たす。生まれ故郷でただの魔道師として暮らすカリュドウのもとにつれてこられた少女の心の中に、今はなきアンジストが少年の頃に持っていた紫水晶を持つのを知り、弟子にする。話はここで終わるが、後日の話があるのだろうか