やはりいいね。原さんの話は

多摩川にアマゾンで起きるような逆流が起こり、数メートルの高波が上流何十キロまでの流域を襲う。そんな噂が密かにささやかれる。東京ポロロッカと呼ばれるその噂がネット上で広がり、それを聞いて右往左往する人々を描いた連作短編集

最初はサーフィンをしに来たものの波が来ず、がっかりした大学生たちが半ば願望から話題にした話が、いつかネット上で評判になり、引っ越しを考えるもの、これをチャンスに地価の高騰をたくらむもの、ポロロッカの情報を捏造して政府予算をもぎ取ろうとする政治家。様々な人々に影響を及ぼし、その生活や家族関係に波を立たせる

最初の話では居酒屋の主人が馴染み客の町工場社長を心配し動く。しかし結果的には社長が二人の息子も含めた家族の再生を考えて行動していることがわかり落ち着く

第二話では田園調布の屋敷に勤めるお手伝いさんと年老いた奥さまが詐欺に会う

第三話では離婚し、元夫への意地から高層マンションに住み続ける母親の話。ローン支払いもあるために仕事にかまけて、子供を寂しい状態に置いていた。最後には何が大切かに気づき、母子の生活を選んでよかった

第四話では民間の気象調査会社に勤める男が主人公で、発注元の役所から報告書の改竄を求められて、最後には首を覚悟して突っぱねてしまう。そんな男と長年付き合ってきた彼女との結末がよかった
第五話ではイベントプランナーとして独立したものの、鬱になり休業してる男。家族の助けで、再起するまでを描いてる。夫婦愛、親子愛

第六話では喫茶店の女主が、馴染み客の元雑誌記者に勧められて、東京ポロロッカなるうわさの真相を調査していく。

第七話では、親と衝突して高校卒業後彼女と上京し、貧乏暮らしをする青年の話。妻が妊娠してるのに、噂を聞いて引っ越しを考えるが、金がない。魔が差して競馬に入れ込み、大損する。落ち込んでる彼を叱ってくれたのは予想屋のおじさん。妻は妻で彼の馴染みの第一話の居酒屋の主に相談して、出直しを画策する

どの話にもドラマがあり、人と人の絆がある。いい話だった。誰にでも大切な人がいる。だからこそ、頭ではただの噂だとわかっていても、不安や恐怖が生まれる。それをなくそうと願い、思わぬ行動をしてしまう。でも何をしても見捨てない人がいる、寄り添ってくれる人がいる。たぶんそれが生きる力になるんだろうな