なかなか面白かった、考えさせられる問題だとは思うが、何を今さらと思わないでもないか

瀬戸内海に浮かぶ鷹の島はユートピアと言われる。東京の台東区くらいの面積の島に千六百人が住む。ここでは住まいも仕事もすべてが平等に、四年に一度の抽選で決まる。島にいる間はお金は不要。島外に向けての製品の売り上げはコストを引いた残りが、島民に平等に分配される

主人公は耕太郎34歳、この島で生まれ育ち、今は島への移住者の勧誘係を勤めている。島民は減った分だけ補充されることになり、アンケートで移住を希望した人の中から抽選で選ばれる。彼は選ばれた人が移住しても問題がないかを事前に調査し、本人に面談して、その意向を確かめる。そのために島から出て、日本全国を飛び回る。

そんな耕太郎が理想社会だと思っていた島への移住を拒否する人間に会ったりしていくうちに、島への不信感を募らせ、ついに改革案を提示するも、島民による投票で却下され、ついには島を追放される顛末を描いた話。

島から出ずに成長した耕太郎には、私らが子供のころから体験してきた辛いことや、それに伴う感情が理解できなかった。想像さえできなかった。妬みとか挫折。競争のない平等社会では欲望もわかないし、やりたいこともない。

そんな耕太郎が変わるきっかけは、移住者に選ばれた相手に接触するには慎重にならないといけない。特に未婚の女性の場合は。それで歯科に勤めながら、習い事をいくつかしているかおりに近づくために耕太郎は同じ生け花教室に通い始める。そしてそれなりに楽しみ、花をスケッチするようになる。そのスケッチが縁で、家元の作品を絵にしてもらいたいとの依頼を受ける。しかも素人だと断れば、大学の講師をしている知り合いがいて、そこで学べばいいと。断りベタな耕太郎は、結局大学に足を向けてしまう

そして生け花や花ではなく、まず人物画を書くことを求められ、それによって、変わっていく。モデルを人としてより深く知ることで絵も変わっていく。誰もが同じなんてあり得ないことに気づいていく

そして理想郷だと信じていた島さえ、その裏に金でコネを作ったりする不平等なことが隠されていたことにきづいていく。

それを改めようとして、かえって島民から追放されてしまう。しかし、人間は弱い生き物で、なにもかも平等な社会には窮屈で生きられないことに気づく。社会が一番ではないんだ。一番は自分、そして愛する人や家族。そのあとに社会だと