信州小諸の女子高生佐保は、高校に入学してから俳句を始めた。地元出身で、教科書にも句がのるほどの、まだ30前の新進俳人花鳥。帰郷して俳誌を始めた花鳥先生のもとには今六人の門下生がいて、佐保はその一人。他には幼馴染みで寺の副住職でありながら皮ジャンの弁慶、木馬さん、中学の国語教師の裕子さん、洋装の老婦人音無夫人、老儒学者の小津翁、小学校四年の久弥君

佐保が学校や日常で出くわす謎を花鳥先生が俳句の解説を交えながら、解いていく三つの話からなっている

以前読んだ橋本紡さんの『葉桜』では書道塾だったが、若い先生が大家の書道家のもとを離れて、子供に書道を教える塾を開いていた。花鳥先生も高卒で第一句集をだし、将来を期待され、大卒と共に愛媛の大家の俳人のもとにいたのが、なぜか故郷にかえっている。何があったのか?最後まで読んだがはっきりわからない。いつかまた続編でも出て明らかになるのかどうか

でもこちらはやや謎解きが表に出ている感じか

最初の「桜」では、佐保のカンニング問題が扱われている。彼女の答案と瓜二つの答案が隣のクラスにあり、その子が首席で入学して学年長を勤めているため、佐保がカンニングしたと先生は頭ごなし。でもしてない、がいかにして可能か?

二番目「菫」では佐保宅に届く、郵便、小包など、訳のわからないものの謎

三番目は「雛祭」。長女である佐保の姉が生まれてから毎年近所の人を呼んで茶会を催すほど熱心な父。地元人間でそば屋を開いている職人かたぎの父親。佐保の高校入学と同時に東京の大学にいった姉。雛祭りの夜、やっと帰ってきたが、若い男性の車に乗っていた。隣町出身でソムリエ志望の若者。その彼が雛壇を見ると、黙って立ち去ってしまい、訳がわからない。その謎を花鳥先生は解き明かしていく

俳人は言葉をあやつるプロだから、また俳句は写生が基本だから、先入観なく、物事をありのままに見るからこそ、見過ごしてしまうような片鱗から真相に近づくのかも知れないな。以前読んだ小説では、同じように言葉を仕事道具にしている落語家が探偵役になる日常の謎シリーズもあったな

謎解きだけでなく、知っていそうで知らなかった、あるいは誤解していた言葉の意味や、しきたりなどの意味もわかる興味深い小説だった。著者は主人公と同じ名前。ということははじめての作品かな。読んでいて、少しごつごつしたり、退屈な箇所もあったが、なかなかよかった。