なんとも不思議な感じの話。

吉田篤弘夫妻の娘の音ちゃん。13歳?

彼女の自宅は東京世田谷の豪徳寺にあり、夕方になると下町ぽい町で、猫がたくさんいる。町には小さな路地が多く、様々な猫を見かける。夕方にキャットフードを手にしたおばさんが現れると、どこからともなく、野良が集まる。食べ終わると消えてしまう

音ちゃんの最初の謎は、彼らはどこに消えたのか?人目を忍び、穏やかに身をひそめる場所はどこか?

彼女の家にはアンゴと呼ぶ猫がいるが、本来は大家さんの飼い猫。小さな新入りがちやほやされるのを見て、なぜか大家さんから音野家に来て居ついてしまった。

そんなとき真っ黒で、考え事をしてるような新人が現れ、あとで父の友人円田さんの家に居る猫だとわかる。父は円田さんを学者で名探偵だという。彼は考える猫だという音の呼び名から、シンクThink と命名。

このシンクが夜遊びから帰ってくると、いつも訳がわからないごみをくわえて帰る。青い16個のボタンとか。
いったいどこからくわえてくるのか?どこに行ってるのか?謎だらけ

そんな謎を名探偵の円田さんと二人で考えることにした音。ミルリトン探偵局と命名する。謎を解くというよりは、あれこれ考えたり妄想することを楽しむ。

そんな二人の活動記録が三つと、それらのあとに挟まれている物語からこの本は構成されている。物語はいわば謎の真相を表してるとも言える。謎の素材となったシンクがくわえてきたものが、話の中に出てきて、そのかたわらにシンクが居てもおかしくない状況を描いている

川ベリにあった菓子工場の老人の話「久助」、オーケストラのホルン奏者の生活を描いた「奏者」、ハンガリーの山里が舞台の民話風な話「箱船」。

これらは作り話だとすぐわかるが、探偵局の話は、実名で音と両親、カメラマン、編集者が出てきて、エッセイ風にも思える。音の両親も、なんか浮き世離れした夫妻だな。

メルリトンと大書されたメモの理由に見える母親の考え方とか、音との会話から見える父親のことなど

きれいにとれた写真もかなり入っていて、なかなかいい。坂口安吾が好きで、顔も似てるから、居ついた大家の猫にアンゴと命名した音。写真見たらいかにも笑えてしまう。

たまにはこんな本も悪くない。癒されるでは大袈裟だが、ほっとするひとときを味わえる本かな