思ってた以上によかった

人の死ぬ間際に現れるバクと名乗るもの。生きてきた中で何度もあった分岐点。その瞬間に戻って生き直すことができると言う。それを決断した瞬間に、前の人生での思い出を引き取り食べるのだと

あの日に帰りたい、なんて歌もあるくらい。誰でも後悔したり、やり直したいことはあるから、私だってあるから。

そんな人たちのもうひとつの人生ドラマを描いた短編集。借りるまでは、設定はわかるし、そんな思いは誰にもあるから悪くないとは思えたが、なんか軽く思えて、読むのに躊躇してた。読んでみて杞憂だった。結構実のある話だった

最初の2、3編は、巻末に現れる対話、別の人物が誰かわからず、無意味な二重構造かと思ったし、分かりにくいなと思ったが。最後まて読んでよくわかった。

人は一人で生きてるわけではないんだ。私が過去のある時点で、分岐を変えることで変わるのは、私の人生だけではない。私のそばにいた人の人生も変わるんだ

他の人の感想も少し読んでみたが、似てる。私も最後の話では泣きそうになってしまった。よくある話だとわかっていても、涙がわきそうになる。

歌がうまくて、聴く人に生きる勇気を与える少女。彼女が難病になり、移植しか手段がなくなる。でもそれには莫大な費用と、臓器のドナーがいないと手術できない

少女が幼い頃、公園で出会った暴走族の若者。寂しそうな彼に少女が歌で元気付けてくれた。感動した若者は、数年後少女の病を知り、手術費を作るため、暴走族をやめ、かつての仲間まで引き入れて、募金のために全国を徒歩で行脚する。ニュースにまでなり金はできたが、ドナーがいなくて、少女は亡くなる。それが選び直した若者の人生だった

再び死を迎えた若者に、少女を救えなかったことを後悔する若者に、バクは意外にも、もう一人の人物を引き合わせる。少女が成人した女性。実は最初の人生で、若者は少女に何もできないまま事故死していた。だから何かをしたいと後悔して、第二の人生を歩んだのだが。
最初の人生では、死ぬ前に若者はドナー登録をしていて、彼の死後に、少女は移植手術して成人していたのだ。そんな彼女がバクに願ったのが、若者が死なずに生き延びた人生だった
どちらがよかったのか言えないが、考えさせるな。バクはしかも、二人がいつの世にか再会して、新しい人生を迎えることをほのめかしていて、よかったねと言いたくなった