じんわりと暖かさを感じる話だった

東京は世田谷の松陰神社近くのタマヨハウスは女性三人が住む下宿屋。アパレルメーカーでデザイナーの36歳のデコちゃん、司法試験に挑戦中の涼子、そして語り手でもある無職の柊子。

大家のタマヨさんは還暦ほどの老女なのに、よく彼氏が訪れる。そのタマヨさんが友達の看病だといきなり渡米。あとで従兄弟を代理人として向かわせると連絡がある

そして現れたのが定年過ぎた強面のおじさんでトモミさん。

外見とは裏腹に家事をこなし、下宿人たちの世話もやりすぎるほどで、あれこれ口を出し手を出す。しかし、そんな暮らしを続けるうちに三人の下宿人とトモミは親子のような関係にまでなる

春から年末までの彼らの様子を描いているのだが、世界の動きや社会とは関係なく、一種の家族小説のような雰囲気の話だ

三人の下宿人にまつわる話もどれもその底に家族の問題、とくに父親との確執があるようだ。

カバー絵は幼女が黒い服を着て、赤い大振りの傘を差して、むっつりしている。

これはプロローグで、柊子が幼い頃に母親と姉と三人で、離婚した父親の葬儀に出掛けた模様を絵にしたもの。タイトルは火葬した父の骨箱を手にのせたことを表したのか?彼女には父の記憶もなく、意味のわからないことだったが、姉はその温もりが昔父と手を繋いだ時を思い出させたのか涙をこぼした

デコさんの父親は浮気ばかりした上に家を出て、相手をなくしてからも戻るに戻れず別居していた。母親が離婚に応じないため。36歳のデコさんが年下の同僚と酒の勢いで交わり妊娠。いいところのお坊っちゃんだったし、デコも仕事をやめたくなくて、結婚までは大変だった。そして式に両親出席を花婿の母に要請されたものの、父が出たがらず、ひと悶着

涼子の父は弁護士事務所を構え、兄も弁護士。しかし正直だけではやれない仕事だから、娘が弁護士になるのに反対で、司法試験挑戦を知り喧嘩して彼女は家を出て下宿屋へ。受かるまで帰らないと宣言した手前、ガンで余命のわからない父を見舞うようにと言う母や兄からの連絡を無視している。

そんな三人の問題を娘のことのように働いたトモミさんは、タマヨさんが年末に帰るのと入れ替わりにアメリカに帰った。娘を亡くし離婚して、孤独だった彼にも新しい娘ができ、三人の未来を見ていく楽しみができた