スーパーへの買い物を頼まれ、娘と行く。免許を持っていないから。ポツポツの雨が真面目に降ってきた

読んだ本のあらすじを書いてみても仕方ないのだろうが、最後の話「潮風の家」も書いておきたい

北海道の西北部にある小さな町天塩。30年ぶりに千鶴子は帰郷した。亡き弟の永代供養を頼み、年賀状だけしていた亡き母の友人たみ子に会うため

住職は町から来た若夫婦で、昔のことを言われないのがさいわい
浜に近い平屋作りのたみ子の家へ。
30年あまり前に空き巣事件があり、弟が犯人だった。両親亡きあと漁師になったものの早起きができず親方に叱られてばかりで飛び出し、あげくのはての犯行。最後の家で見つかり、手近なバットで家人を撲殺して逮捕。留置所で首吊り自殺。

弟の死で周囲は優しくなり事件は終わったと思っていたが、網元の息子に乱暴され、世間は甘くないと痛感。人殺しの家族は人殺しかのように思われる。たみ子の差し出す金を持って離郷

都会に出ておきまりの水商売。男もできたが結局別れた。水商売での先輩が足を洗って始めた弁当屋。誘われて働く。今は独り暮らしの老人宅を回って弁当を配っている

たみ子はもう85。彼女が吉原で稼いで建てた家。昔はニシン漁で賑わったが、もうけたのは網元ばかり。雇いの漁師の娘は身売りして家族の生活を支えた。しかし帰郷しても両親はなく、兄弟は家を出て音信不通。独り暮らしの老女。似たような女が周囲にいる町。

終日テレビを見て過ごす。動けなくなったら施設に入れると、たまに来る役場の職員は言うが、予算がなく、死にそうにならないとダメだろう

寝物語に母親がわりのたみ子と話す。生活できないときには体も売ったという千鶴子にたみ子が言う
売れるものを売って何が悪い。ワシもお前のおっかさんもみんな同じ。泥棒したわけでもない。金以外でも何かをもらったんなら同じこと。それをしたことがない女なんていない。体を壊さなければ好きに使えと
たみ子の言葉にはぬくもりがあり、取り散らかした感情がすべて本来あるところに納まってゆく気がした

翌朝たみ子は古ぼけた冊子を差し出す。新吉原女子保健組合 機関誌 婦人新風。本名で働いて書いた詩があった。親孝行できたのがうれしくて、記念に持っていた。でも死後に人に見られても恥ずかしいから、千鶴子に処分してもらいたいと

帰宅後、千鶴子はたみ子に最新の大型テレビを送る。お礼の葉書が届く