入浴後、気分をあらたに読み始めたが、最初はあまりよいとも思えなかった。八編の連作短編集

最初の話では、今は引退してる73歳の勲が、孫息子とお墓の下見に行く。その霊園のある場所の近くに、昔菓子工場があり、父親から引き継いで二代目社長していたのが20代の勲。10年あまりで会社はつぶれてしまい、勲は繊維会社で社員として勤めて、無事定年を迎えたようだ。霊園横の桜並木は社員とよく花見していた。そして当時通った床屋が近くにあった。今はビルになり、その一角にまだ店は残っていた。当時の初代の店長はなくなり、今は三代目の嫁が店をやっている。

二番目の話では時間が少し遡る。孫どころか娘の香が結婚しようという頃の話。はじめは時間というか時代が遡ってることに気づかず、登場人物の名前は同じなのに、設定が違う話なのかと勘違いした

今全編読み終えて、勲という冴えない男が、父の作った会社をつぶした男が、輝いて見える。最後の話は勲が亡くなったあとの話だが、読んでいて、じーんとくる。離婚し通販会社の社長の娘の香が部下の造反に遇いくさっている。例の床屋で勲は亡くなったらしい。そこに行って、話を聞いて、一見ぶっきらぼうで感情のからにこもったような父親が、どんなに頼りになる親だったか、かっこいい親だったか再認識する。そして仕事を巻き返す気持ちになる
勲の妻も香の息子も、家族四人がだれもが、生きていてほのぼのとさせる。勲が主人公というより、家族が主人公なのかな。あるいは勲と香の親子かな