北康利『九鬼と天心』

どちらかと言えば、この本での主役は九鬼隆一のようだな

天心は彼の部下として仕事を始めているし、一回りの年の差がありながら、亡くなったのも八年早い。

しかもこの本の最後に扱われているのは九鬼の息子。しかし九鬼の後妻と天心の不倫によって生まれたかもしれない。その彼もが親同様放蕩の血を秘めていることが皮肉でもあり、業の深さなのかもしれない

九鬼は運に恵まれず大臣にはなれなかったが、それに匹敵する力を文部省や教育界で持ち、仕事をしたようだ。しかも男爵にもなり、貴族院議員、宮中顧問官、さらには終身枢密顧問官にまで。戦前にはかなり知られた存在だったようだが、現在は誰も知らないだろう

まあ明治時代の政治模様、政治家たちの浮き沈みはあまり興味はないものの、一人の男、人間の生き方として見た場合、なかなか興味深い点もある