部屋の片隅にあった姿見に全身を写してみる。
小柄で色白の女性の姿がそこにはあった。
不可解も良いところだが、頬を、首を、胸を、腹を…何処を触っても、触っている感覚と同時に触られている感覚がある。
要するにこの身体は紛れもなく自分自身のものなのであった。
若い女性の身体といえば、金を払ってでも触れたいものであったはずが、所詮それは他人の身体だからだと知った。
自分の身体に興奮などするヤツはいないのだ。
と、妙に感心している場合ではない。
これからどうしたものかと思案する。
室内を見渡すと、ふたり掛けのテーブルを挟んで置かれた二脚の椅子の一方に鞄を見つけた。
気は咎めるが、中を改めさせてもらう。
スケジュール帳を開いてみると、今日は空白だった。
ただし、昨日の欄には「休み」との記載がある。
ということは、今日は仕事なのだろう。
学生というほど若くは見えなかった。
勤め先に繋がるものははさまってはいないかと、スケジュール帳を隅々まで眺めているうちに気がついた。
勤め先が特定出来て、出社したところで、やったこともない仕事をできるわけがないことに。