セレモニーが終わり、荷ほどきのために部屋に戻ることが許された。
私は相田穂花と同室になった。
スマホを取り出してみるが、返信はなし。
「ねぇ、ID交換しようよ」
穂花に話しかけられた。
「色々、同室で連絡取り合うと忘れ物した時とか便利ってお姉ちゃん言ってたよ」
屈託のない笑顔だった。
これから始まる生活が楽しみで仕方ないという感じ。
彼女の気持ちに水を差さないよう振る舞おうと決めた。
IDを交換し、そのチェックを済ませた後も、登録に手こずっているふりをしながら、私はネットで検索をかけてた。
まずは、有澤舞花の名前と出身中学を検索ワードにするが、これといって収穫なし。
次にホテルを出る際にフロントで母親が受け取っていた領収書に書いてあった彼女の名前を打ち込んでみた。
名前だけでは絞り込めなかったので、出身地名も入れてみると、有澤医院の副理事長を務めていることがわかった。
「ねぇ、舞花ちゃんはなんて呼べばいい? 中学ではなんて呼ばれてたの?」
「色々だよ。マイカとか、マイとか」
適当だが、同中出身者はもちろん同じ市から来た子も居ないようなのでバレはしないだろう。
「うーん、誰も呼んでないのがいいなぁ。どうしようかなぁ」
「穂花ちゃんに新しいあだ名付けてほしいなぁ」
スマホで情報収集をしながら、相手のテンションに合わせる。
通話アプリのグループ「有澤家」には、ママ、パパ、じぃじ、ばぁば、しかいないため、舞花には兄弟がいないか、スマホを持っていない程小さな兄弟がいるかどちらかだろう。
後で時間を見つけて片っ端からトーク履歴を読み込んで、舞花のことを知っていかねばと思った。
「じゃあ、アリカ!有澤舞花を縮めるの」
「だったら、穂花ちゃんはアイカ? なんだか似ていてややこしいね」
私たちは笑いあった。