鏡の中の私は、いや、この場合、私と呼ぶべきか、有澤舞花と呼ぶべきか定かではないが、推定10代半ばの女の子だった。
取り立てて美人でもないが、ブスでもなかった。
垢抜けない感じは、舞花と同じ年ごろだった頃の私にも通じるものがあった。
しかし、よく見ると、眉を整え、まつ毛を上げて、色付きリップでも塗れば、クラスでも割と上位に入れる顔かもしれなかった。
さらにじっくり観察すると、鏡の中の少女と、先ほどの女性の顔は、口元や輪郭がとても良くにていることに気がついた。
舞花が10代で、先ほどの女性が推定40代。
親子だと見てほぼ間違いないだろう。
あまり長く洗面所に居て不審がられてもかなわないので、用を済ませて室内にもどった。
「舞花、朝食食べに行ける? ルームサービスにしておく?」
見れば女性はすでに着替えを済ませていた。
上品な白のニットに、細身の黒いパンツ。
私の母のように、スーパーのパートをして、帰りに半額シールが貼られた商品を買って帰るタイプではないだろう。