去年の年末から数えて結構なハイペースで本を読んでいる。恐らく13冊くらいだと思う。作者はどれも池井戸潤。最近はまっている。
きっかけは川口から借りたハードカバーの「下町ロケット」だ。中小企業、銀行、融資、稟議、不渡り、決算、世の中は忙しい。ビジネスを起こすのも継続するのも開拓するのも大変だ。何事にも金がいる。
池井戸氏は元大手銀行の行員だったという経歴を持ち、コンサルティング業、ビジネス書などを手がけ、小説を書くに至ったみたいだ。
彼の書く作品は人の生き様(クリーンなところも、かなりダーティなところも)を鮮烈に描き、自分のキャリアをもとに作品を展開している。作品の多くは銀行を舞台に展開され、銀行にまつわる周辺企業の話が多い。
勧善懲悪がテーマの半話が多いが、人の心のダーティな部分を書くのが彼はとにかくうまい。
出世、自己利益、自己保身、誰もが持っているだろう心の悪しき部分を実に巧みに表しているように思う。こんな社会人には、こんな大人には、こんな上司には、絶対になりたくないと思いながらも、どこか心の片隅にこれらを受け入れてしまうような部分がある。
「働く」とはいったい何なのか。俺はここのところずっとそればかり考えている。
考え尽きることない堂々巡りのような気がして時に思考をストップさせる事がある。
出世すること、高収入を保つ事、結婚する事、究極の自己実現をすること、遊ぶ事。
働くという事は、ひいては人生そのもののような気がする。日本だけでみても数多の社会人が日々骨身を削り働いている。それぞれのスタンスがあるだろうに、各々守るべきもの、譲れないもの、妥協するもの、実にイロイロな葛藤を抱えて世の社会人は働いているだろう。
俺の仕事観って何だろうか。自己実現、出世、収入、結婚、幸せ。
幸せって何だ。今の生活に不満があるわけではない。自分一人でそこそこやっていけるだけの給料はもらっているし、社宅も完備されている。悪くない。
じゃあ納得しているのか?いまいち分からない。
満足しているのか?これにははっきりと答えることが出来る。ノーだ。
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近しい友人たちが新たなる道へ進もうとしている。
川口は関西へ転勤になるし(東京には頻繁に来るらしいが)、足立は修士課程への進学を決めた。
有積は教職員になるし、育英も春からは社会人だ。
俺は、俺は、どうだ。このままでいいのか。
季節も、人も、時間も移ろう中で俺は進めているだろうか。
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俺はよく本を読む。文庫本を片手に暇さえあればどこでも本を開く。
なぜ本を読むのか?
もちろん好きだからだ。文学が好きだし活字を読む事もすきだ。毎回新しい世界に飛び込んでいけるような気がするし、過去に読んだ本をもう一度読む事もある。その時々で違う観点からその物語をとらえる事ができるし、時期もそうだろうがそのときの心境で新たな一面、新たな考察が生まれる事がある。
だから本を読む事がすきだ。
幼少から活字に親しみ、物語に触れて来た。当然の帰結と言えばそうなるだろうが、それだけではないような気がする。事実、高校に入ってからは本を全くと言っていいほど読まなかった。部活で忙しくしていたということもあるだろうが、貪るように読んでいたアノ頃から考えるとにわかに信じ難い。
ところが大学生になってふと本をひもとく機会が増えた。それは唐突に俺の心の中に芽生え、そして
深いところまで浸食していった。井戸の中に身を埋めるように俺は読書の世界へと潜り込んだ。
自信喪失、いや、自身喪失かな。
何をどうしてよいか、何を考えるべきなのか、何をすべきなのか。
答えを求めた。砂漠で水を求めるが如くその答えを文字通り渇望した。
学生に有りがちな悩みやもやもやとした感情だっただろうが俺はとにかく必死だった。
数多といる学生の中で自己を確立するために本を、とにかく読んだ。
本に答えをもとめた。
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「回答はあっても解答はありません」
村上春樹は言った。
道理だと思う。
どれだけ文字を追っても、どれだけ本を読んでも、それにどれだけ時間を割いても恐らく解答はない。
そこにあるのは回答であって解答ではない。
本の数だけ、フレーズの数だけ、回答がある。
解答は唯一無二。
己の中にしかない。
回答に目を通せ。それもできるだけ多くの。
回答を経て解答を導きだす。
今の俺に出来るのはそれぐらいのことだ。

