無性に叫びたくなる時がある。

大声をあげ、手に着くものを投げつけ、破壊衝動が抑えられなくなるほどに
感情が高ぶる時がある。



「もう、いいよ。疲れちゃった。」

「またかよ。いい加減諦めろ。お前が何を投げだしたとしても、俺が引き戻す。」

「ほっといてよ、関係ないじゃん。音だって、もううんざりしてるんでしょ。」

「(はじまったよ、このネガティブ野郎が!)ああ、うんざりだね。」

「なら良いじゃない。僕の役割は終わってるんだから。父さんも母さんも許してくれるよ。」

(何が終わってるんだよ、何を許されたんだよ。あ~いらいらする)
思わずガシガシと頭を掻きむしってしまう。

「音はこれから好きにすればいいんだ。狭い世界に閉じこもる必要もないよ。
やりたいことしたらいい。したい事をしたいようにすればいいんだ。楽しい事・・・・・」

「楽しい事ってなんだよ!やりたい事やってないと思ってんのかよ!
訳わかんない事言ってんじゃね~よ!俺が好きにしてないと勝手に思ってんな!」

「何でわかってくれないの。」

「分らない、お前が言いたい事がわからん。お前の考えてる事なんて、分りたくもない。」

そうは言っても、分りたくないけど、分ってしまう。
身体が一つに魂二つ。分らない事がないから、言ってしまった気持ちも分る。

(待てよ、俺は本当に何もかも分っているんだろうか?すべてを察している?)

少し頭を冷やそう。冷静になろう。
風ならどう言う?涼ならどうする?
じゃあ、俺はどうしたらいい、俺にしか出来ない事はなんだ?

普段は恐ろしいほど落ち着いている。並大抵な忍耐力ではない。
それだけに、荒れた時には手をつけられなくなる。

(こんなことも、俺の前でだけだから、それだけでも凄い事なんだけど・・・)

足の踏み場もないほどにモノが散らかった部屋。
まともな状態で置かれているものは、もうほとんどない。
割れるものがなかったのは良かったが、時間と止めてしまった時計には滅入る。


「そろそろ、気が済んだか?毎回の事ながら、片付けるのも自分だ。」

「あ、あ~あぁァァ」

「これだよ。そりゃ、意識飛ばして居ないんだから、分んないだろうが、
俺が後始末してるんだから、言ってる意味わかるな。そろそろ、懲りない?」

「・・・・・・・。」



鈴の感情が抑えられなかった時期、守るべき双子の弟が、
自分たちの道を歩き始めた時期であった。
今考えると、ほんのわずかな期間であったが、
その頃は永遠に続く周期となると思った。

負の連鎖、非生産的な行為の解消の為に、音は思い切った提案をしたのは、
それからしばらくしてからの事であった。