ぼくの名前は、ムク。飼い猫ニャ。今夜は、野良猫のシピと、同じく野良猫のクロとギャザリングをしたニャ。でも、平和な夜だったニャ。ぼくらは、森に来たニャ。今夜のギャザリングは、森のボス猫ムゥに頼まれたものだったニャ。だから、報告に来たニャ。森の真ん中の大きな切り株の上に、ムゥが座っている。「むぅ、、帰ってきたか。どうだった?」ムゥが単刀直入に聞いてくる。「エサがにゃかったにゃ。」シピが答える。シピはいつも腹が減っている。「人間を見かけなかったニャ。」「そうにゃ。ヨナもいなかったにゃ。」ぼくとクロが、夜回りっぽいことを言った。「むぅ、、そうなんだ。今夜は、やけに静かなんだ。それに、ほら、空をよく見てみろ。」「空にゃ?あれ?まだ月が出ているにゃ。」シピの言う通り、お月様がまだ煌々と出ている。本来なら、朝が訪れていてもおかしくないはずなのニャ。「むぅ、、お前達、疲れているところ申し訳ないが、もう1度回ってきてくれないか。これは、何か異変が起きてるに違いない。」3匹は、特に異を唱えなかった。最初の夜回りがあまりに退屈過ぎて、やる気が有り余っていたからだ。みんなが快諾すると、ムゥは、「ありがたい。もう1つのギャザリングにも頼んだんだが、断られてしまってな。そのうちの1匹が何かおかしなものを見たと言っていたから、聞いてみるといい。この奥の泉で、水遊びをしているはずだ。」と言った。ぼくらは、泉に向かった。泉につくと、途端にバッシャーンと音がして水が跳ね上がった。なんにゃ?何が起きたにゃ?シピとクロが驚くのも無理もない。勢いよく水が跳ね上がったものの、その原因となりそうな生き物などは見当たらなかったのだ。でも、ぼくは分かった。なぜなら、原因は1匹の迷い猫によるもので、その猫とは1度ギャザリングをしたことがあったからだ。「すいニャ。」ぼくは前足で、泉の真ん中を指し示した。「あ、ムクにゃ!久しぶりにゃ。」迷い猫のすいが、ひょっこりと顔を出す。だが、それでもまだ判別しにくい。すいは水のような体をしている迷い猫で、その大半が透き通っている。
シピが尋ねてくる。「ムク、知り合いにゃ?」「前に、ギャザリングで一緒だったニャ。水のような体をした、すい、という猫にゃ。」クロが、すいに尋ねる。「ムゥが、君が今夜何かを見たって言ってたにゃ。それを教えて欲しいにゃ。」「ん?見たにゃ。お魚にゃ。大きなお魚を見たにゃ。」「お魚にゃ。どこにゃ?」シピが食いつく。よほどお腹が空いているらしい。「空にゃ。ヒト町の空を飛んでいたにゃ。」「大きなお魚が空を飛んでいたにゃ?そんなこと、あるにゃ?それじゃ、食えないにゃ。」シピが落ち込む。ぼくらは、すいにお礼を言って、ヒト町に移動した。ヒト町では、シピがいい板を見つけた。ぼくにも勧めてくれたので、一緒に爪研ぎをした。これは、ちょうどいい板ニャ。ぼくは、ご機嫌にニャった。ぼくらが道端でせっせと爪を研いでいると、道のど真ん中を鉄の魔物が猛スピードで走ってきた。道の真ん中には、なぜか人間の女の子がいる。あぶニャい!その時、クロがすごい勢いでその子に体当たりをして、弾き飛ばした。鉄の魔物がグイーンと走り去った後、女の子はクロに「ありがとう。勇敢な猫ちゃん。」と言った。クロは、ニャンとだけ鳴いた。彼は誇り高い猫なので、そう簡単には人間に懐かない。ほっとしたのも束の間、ぼくらを一陣の風が襲ってきた。それぞれが危険を察知して、飛び退く。風は、魚だった。しかも、頭が6個もある。鼻先がトンがっていて、口にはキバがいくつもついている。見るからに、獰猛そうな魚だった。魚は空から、ぼくら目がけて突進してきたようだ。そして、また空中に上がり、回旋する。どうやら、もう1度突進してきそうだ。これが、すいが言っていた空飛ぶ魚かニャ?だとしたら、すいはもっと危険さをぼくらに伝えるべきだったニャ!ぼくは、すいへの怒りを猫パンチに変えた。顔とんがりキバキバ6つ頭魚が突進してくる力を利用して、逆にパンチをお見舞いしてやった。6つの頭のうち、3つがぐったりした。そこを逃さず、すかさずシピがひっかく。さらに、クロがひっかく。6つ頭魚は、堪らんといった感じでよろけながら空に逃げて行った。
「ニャンだったニャー?今のは。」空を見上げていたぼくは、あることに気づいた。「みんニャ。あれニャ。あれが行ったり来たりしてるニャ。」にゃ?にゃ?ぼくが突然ニャラティブを始めたものだから、2匹が戸惑っている。「あれニャ。人間が、たまにチラチラと見るやつニャ。それが行ったり来たりしてるニャ。」「分かったにゃ。お店の扉にゃ。前に立つと、勝手に開いてビックリするやつにゃ。」クロには伝わらなかったが、シピが前足を挙げる。「おれは、分かったにゃ。ニャラティブを引き取るにゃ。あれにゃ。人間がたまに見て、いきなり焦り始めたりするやつにゃ。」「にゃるほどにゃ。腕にもつけていたりするやつにゃ。」「そうにゃ!あれを、下僕行動設定機と名付けるにゃ。」3匹は、お店の外についている大きな下僕行動設定機を眺めた。「これのせいで、夜が明けないニャ?」「夜が明けないから、これがぐるぐるしてるにゃ?」「どっちにしても、このままじゃ、ずっと夜のままにゃ。」ぼくらは首を傾げながら、ヒト町をぐるりとした。そして、あることに気がついた。道行く人間が、みんな座り込んで寝ていたのだ。1人2人なら、また頭がぐるぐるになるものを飲んで、ご機嫌に寝ていると思うところだが、そんなはしたないことをしそうにない人間達も寝ていたので、ぼくらはヤバいと思った。クロが1匹の猫を見つけて、何かを聞いている。その猫は、ちょっとケガをしていた。クロはその猫から聞いたことを、ぼくらに伝えた。「あの猫も、さっきの化け物魚に襲われたらしいにゃ。なんとか追い払ったらしいけど、その時にあることに勘づいたらしいにゃ。それを聞いて、にゃるほどと思ったにゃ。」「あることって、、?」「なんニャ?」2匹の質問を受け、クロのニャラティブが始まる。「そう言えば、あの化け物の感触は、少しおかしかったにゃ。なんと言うか、追いかけても追いかけても、手に入らないものに似ていたにゃ。これは、とーっても、もどかしいにゃ。」「ニャルほど。触れないやつニャ。人間が煙を出して、空中に浮かび上がらせる変な映像ニャ。あれ、何度ちょいちょいしても触れないから、もどかしい思いをするニャ。」ぼくが答えると、クロが首を振る。うーん、ちょっと違ったニャ?
シピはまた分かったらしいが、目の前をネズミが通りかかったので狩りに夢中になって、今度はニャラティブを引き取るつもりはないようだ。ある程度、ヒト町の調査は終わったと感じたぼくらは、団地に移動した。いつまでも終わりそうにない濃い夜の気配に、シピもクロもご機嫌になった。3匹全員、ご機嫌ニャ。そこで、シピがようやくニャラティブをする気になってくれた。「触れないのは、触れないにゃ。でも、クロが言っているのは、暑い日によく見かけるやつにゃ。暑いからこそ水が欲しいのに、そんな時に限って水が逃げるにゃ。」「ニャニャニャ!ニャルほど!あの、もんやもんやするやつニャ!」「そうにゃ。これを、見えるのに食えない魚と名付けるにゃ。」「いいニャ!見えるのに食えない魚ニャ!たしかに、さっきの化け物魚をパンチした時、なんかスカスカした感触があったニャ。」「そうにゃ。ひっかいた時、するするした感触があったにゃ。シピも、そうにゃ?」「そうにゃ!なんだか、全然引っかかっている気が、、、、、、」シピの会話が途中で止まったので、見るとシピが寝ていた。ニャ?話してる最中に寝るなんて、あるニャ?驚いてクロを見ると、クロも寝ている。ニャー?そんなことって、ある、、、、、、、、ニャ〜、、、、、。あ〜、ぼくもなんだか眠くなってきたニャ〜。ぼくらは団地の中心で、眠り込んでしまった。ふと気づくと、暗い場所にいた。夜が終わっていないからではなく、おそらく室内のようだ。ぼくは、隣でスヤスヤと寝息を立てているシピとクロをゆすった。にゃ〜。にゃ〜。と2匹とも伸びをすると、暗い部屋の中をウロウロし始めた。そして、押すと開きそうな扉を見つけた。ぼくらが力を合わせてそれを押すと、途端に明るい場所に出た。明るいだけでなく、とても暑い場所だった。それもそのはず。そこは炎の柱が立ち昇る、なんとも言いようのない不思議な空間だった。空間はとても広く、きれいに削られた石がいくつも積み上げられている。石が段々に積み上げられている場所もあり、ぼくらはビックリしつつも、恐る恐るそれを登っていく。1番上に着くと、「ようこそ、おいでくださいました。」という声が空間中に響き渡った。
ぼくらはキョロキョロしたが、誰もいなかった。すると、奥から黒い衣を纏った得体の知れない不気味な容姿をした者が出てきた。どことなくヨナにも似たその者は、首元に赤い首飾りのような、牙のような物を身につけている。ぼくらが警戒する体勢をとると、その者は宥めるみたいに手を揺らした。「どうか、落ち着いてください。私はあなた方の敵ではありません。私は夢を司る者。そして、ここは夢の世界ドリームランドです。あなた方には、夜界の1種と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。」ぼくらは、何かにつままれたような顔を見合わせた。夢を司る者は続けた。「実は、あなた方を呼んだのは私なのです。今、ドリームランドでは、困ったことが起きていまして、ある頼み事をしたいのです。」「困ったことニャ?」「はい。ドリームランドの宝物が盗まれてしまったのです。」「宝物にゃ?食えるにゃ?」シピがすかさず尋ねる。「いいえ、食べられません。皆さんが見られた、あの化け物のような魚を作り出すことができる。そんな道具です。それが、タンサクシャと呼ばれる人間に盗まれてしまったのです。」「タンサクシャにゃ?」宝物が食べ物じゃないと知り、興味を失ったシピに代わって、クロが尋ねる。「はい。どこでもズカズカと入り込み、我が物顔であらゆる物を持って行ってしまう破廉恥な連中です。」「なんで、ぼくらに頼むニャ?自分で見つければ、いいニャ?」ぼくが至極真っ当なことを聞くと、夢を司る者は首を振った。「それが、、、タンサクシャに我々が直接手を出すことは、古い契約によってできないのです。その契約相手というのが、偉大なる古猫神様キャットルフという方で、今はにゃるいえという所でお休みになっておられます。ですから、我々は猫の皆様を信用しているのですよ。どうか、聞き入れていただけませんか?」「ニャ!」「にゃ!」「にゃ!」ぼくらは、OKのニャを返した。怪しいいでたちだったが、話の中身は本当のことのようだったし、この依頼を解決すればムゥの依頼も解決できる気がした。「ありがとうございます。さすが、猫様!では、元の世界へとお返しいたしましょう。」ほわわ〜んという気持ちになって、ぼくはまた眠くなった。
行きは良い良い、帰りは怖いニャ。ドリームランドに来た時は見なかった恐ろしい夢を、ぼくらは見た。暗い暗い場所を、ぼくらは走っている。後ろから、何者かが追ってくる。無数の肉球らしきものが見える。ぼくは懸命に走った。前に明るい光が見える。シピとクロは、どうにかそこに辿り着いた。ぼくは、後1歩というところで肉球に捕まってしまう。このままじゃ、リサちゃんに会えないニャー!ぼくは飼い主の人間年12歳の女の子を思い浮かべて、力を振り絞った。ぼくには、リサちゃんのためなら、いつもの倍の力が出せるという特技がある。なんとかかんとか暗い夢を抜け出した。現実世界に戻ってきたぼくらは、まだ行っていない所、広場に移動した。広場の夜は、いつもなら馬鹿騒ぎする人間どもや暴れ回る鉄の魔物などがいるのだが、今はシーンとしていた。猫達が、そこら中に寝そべって寛いでいる。あれ?これはこれで、猫にとっては天国ニャのではと思ったが、いやいや下僕達のことを守るのが猫のつとめだと思い直した。1番人間に親しんでいるはずの飼い猫のぼくが、こんなことを思っちゃいかんニャー。ぼくらは寛いでいる猫達を片っ端からペシペシして、調査をして回った。ぼくがひと回りしてくるとクロが、あるブチ猫からもう少しで聞け出しそうになっている状況に出くわした。「にゃんにゃー。ぼく、今夜はやけに眠いにゃー。」と、ブチ猫が言う。「頼むにゃ。起きて欲しいにゃ。怪しい人間が、化け物魚を作っていたところを見たんだにゃ?」と、クロが必死にブチ猫をゆする。んー、むにゃむにゃ。ブチ猫は答えない。ぼくは、ブチ猫の上に乗っかって、くすぐった。にゃは。にゃは。にゃは。ブチ猫が、途切れ途切れに喋る。ぼくはくすぐるのに集中していて聞き取れなかったが、クロはなんとか聞き取ったらしい。そこにシピも戻ってきたので、クロが情報を共有する。「怪しい人間は、、、おそらく夢を司る者がタンサクシャと呼んでいた奴だと思うが、、、タンサクシャは、ある道具を使って、化け物魚を作っていたそうにゃ。この道具、、、おそらくドリームランドの宝物は、なんか人間が幻覚を見るヤバい道具らしいにゃ。」
クロの話は、そのまま自然とニャラティブに移行する。「その道具は、細長いにゃ。小さな箱から取り出してシュッてやると、先っぽがポッと明るくなるにゃ。」ぼくは分かった。リサちゃんのうちにあるニャ。「分かったニャ。うちにあるニャ。リサちゃんと、パパさんとママさんが集まって、みんなでその細長いものを投げるニャ。それが板に当たると、ピカピカ光って綺麗ニャ。」自信があったのに、クロが頭を抱えた。シピが、今夜3回目の引き取りニャラティブをするニャ。シピは冴えてるニャ。「明るくなった上に、温かくもなるニャ。寒いところで使うと、たぶん幻覚が見れるニャ。」ニャー!!ぼくが叫ぶと、シピが3回目の猫語名付けをした。「ゲホゲホ棒ニャ。」その時、どこからともなく煙が漂ってきた。こ、これは?も、もしかして、ゲホゲホ棒の煙ニャ!ぼくらはタタタタタッと、その煙のもとを辿って小走りをした。そして、遥か上空に化け物魚が優雅に泳いでいるのを発見した。化け物魚は悠然と、団地方面へと向かう。ぼくらは後を追いかける。団地では、デブ猫が入口を塞いでいた。シピがイライラする。ぼくは鳴き声で、子分のねっこを呼んだ。ねっこに、怪しい人間を見なかったか聞いた。「んにゃー。眠いにゃー。んー、確かにこんな眠い夜に元気に動き回ってる人間を見たにゃー。」ぼくは、ねっこから聞いたその人間の特徴をシピとクロに伝えた。ただ、どうしてもその服が上手く言い表せなかった。よし!ニャラティブ、頑張るニャ!「人間の家にいる人が、着ているニャ。その人は、人間のエサを作ったり人間の服を洗ったりするニャ。」クロが前足を挙げる。「にゃ。分かったにゃ。人間がよく前にかけて、垂れ下げているものにゃ。」「ニャニャ。惜しいニャ!」シピにはまた伝わったようだが、またまた狩りに出かけてしまった。気ままな奴ニャ。仕方がないので、もう1回ぼくがニャラティブをする。「どこの家にもいる人じゃないニャ。ちょっと広いおうちじゃないと、その人はいないニャ。それと、その服はヒラヒラしてることが多いニャ。可愛らしい感じニャ。」
クロがにゃるほど、にゃるほどと頷いてくれたので、ぼくは今夜としては初名付けとなる猫語を作った。「真の下僕だけが着られるもの」ニャ!もちろん、この下僕には、尊敬の意味を込めているニャ。ぼくらは眠い猫達にうざがられながらも、真の下僕だけが着られるものを着たタンサクシャを探した。有力な手がかりを追っていくと、あるビルの屋上に辿り着いた。屋上には、真の下僕だけが着られる服を来た女の子と化け物魚がいた。今度の化け物魚は頭こそ1つだったが、うねる足が何本もついていた。そう、まるでタコのようニャ。じゅるりと、シピがよだれを飲み込んだ。女の子が叫び声をあげる。「シャーハッハッハッハー!」明らかに、正気じゃない感じがした。ぼくらは、1歩ずつ後じさりをした。「現実世界なんてねー!つまらないことばかりなのよー!だったら、みんな寝てしまえばねー!幸せになれると思わない?シャーハッハッハッハー!」ふーっ!!!ぼくらは勇気を振り絞って、唸り声を出した。「なに?猫ちゃん達?文句があるの?そう!だったらねー!永遠の眠りにつかせてあげようかしら!ほら!やっておしまいなさい!シャクトパス!」クロが先に動いた。ぴょーん。ぴょーん。ぴょーん。と、雲の上を跳ぶ。そして、ぼくらを見下ろした。ぼくらは、俄然張り切った。ぼくは猫パンチで、女の子を殴った。あれほど威勢のいいことを言っていた割には、その一撃で女の子はあっという間にのびてしまった。シピも猫パンチを繰り出す。相手は、シャクトパスだ。おー、シピの特技が出たニャ。シピのパンチをする前足が、炎のように燃えている。バーン!バーン!という衝撃とともに、シャクトパスの足が全部千切れた。このままだと戦いが終わってしまいそうだったので、クロが急いで雲の上から飛び降りた。かなりの跳躍力で、クロの力がみなぎっているのが分かった。上半分だけになったシャクトパスが、こちらを目がけて飛んできた。ぼくは、思わずガブリンチョと噛んだ。ふニャ?なんだか、ぼやけた味ニャ〜。シャクトパスは、なんとその噛みつきで消えてしまった。
「シャクトパス、食べてみたかったにゃ〜。」クロが、残念そうに嘆いた。ぼくは見えるのに食えない魚だから、味はあまりしなかったニャと慰めたが、クロとしては見下ろしたり飛び跳ねたりするだけではなく、パンチしたり引っ掻いたり噛み付いたりしたかったのだろう。見た目に反して結構あっさり倒れてしまったので、クロの気持ちはよく理解できた。「猫の皆さん、ありがとうございました。」頭上から声がしたので、見上げてみると夢を司る者が現れた。夢を司る者は倒れているタンサクシャから、ゲホゲホ棒を箱ごと取り返した。そして、ぼくらに手を振ると、スーッと消えていった。ぼくらは森に戻り、ムゥに報告しに行く。森に戻った頃には、空が白み始めていたから、くどくどと説明するまでもなかった。「むぅ、、、感謝する。」とムゥは言った。今更だけど、ぼくと名前がめちゃめちゃ似てるニャ。ふぁーーあ。シピが、大きなあくびをする。さすがに、2連続のギャザリングは疲れたにゃ、というあくびだ。「疲れたけど、面白い体験だったにゃ。もう1匹の知り合いの黒猫のベレトに、今度話してあげるとするにゃ。」ニャニャ!その猫なら知ってるニャ!猫の世界は、広いようで狭いニャ。翌日、ぼくはリサちゃんとアキハバラという所に出かけた。ぼくは、その町であれを見つけて、ガラスをガリガリと引っ掻いた。引っ掻きながら振り向くと、リサちゃんが恥ずかしそうに手を振った。「なになに?ムク?それを着ろって言うの?さすがに、それは私には着れないよぉ。たしかに、可愛いけどね。」と、リサちゃんは笑った。帰り道、お寿司屋さんの前で、クロを見かけた。クロは、水槽に入っているタコをじっと見つめていた。(完)