「マリコー準備できた?」



私はカーテンをしたまま窓をあける。



「まだメイク終わってない!!」



「お前最近目の周りグリグリ塗りすぎじゃない?」



「だって顔うすいんだもん…」



「まあかなり薄いけど、別に濃いからいいってもんでもないしょ」



「ん~……それもそっか!じゃあ終わった!」



シャッ



カーテンをあける。



「十分化粧終わってるしょ笑。 あ、見たことないの着てる。買ったの?」



「あ、雄一もうコート着てる!セーターこの前買ったの音符


 かわいぃしょWハート



「おまえっぽい笑。似合うね。じゃあいま行くわ」



おろしたてのアーガイルのセーターをにっこり笑ってながめ、


雄一は自分の部屋の窓を閉めた。



私もほめられ気分をよくして、香水をつけてコートを着る。





雄一と私は小学校3年生から隣の家に住んでるおさななじみ。



転校してきた私を、周りのひやかしを気にせずにいつも親切にしてくれた、




初恋の人。




「マリコー!雄一くんきたよ!」



「はあ~い」



階段をかけおりると、玄関に母と雄一がいた。


「おばさん、寒いんで中はいってください!」



「はいはい。いってらっしゃーい」



「いってきまーす」




きのうの大雪とはうって変わって、今日は青空が見える。



「今日あんま寒くないね!」



「そうかー?俺寒い!」



体をトンっと私にぶつけてくる。



「なによう笑」



「寒いからおしくらまんじゅう」



「そうやってマリコに触りたがって~」



「そうそう。大好きだからもうくっついてたくてっ



「ぎゃっ」



すごい勢いで体当たりされて、雪の壁にぶつかった。



「ちょっと!こっち側だけ雪だらけなっちゃったしょ!!」



「なにしてんの笑」



自分からぶつかっといて、ほろってくれて。


小さいころから変わらない行動。




ほろってもらいながら、かつての初恋の人に質問をする。



「…この前付き合ったかわいこちゃん、元気?」



「えー?笑。 …あぁ…別れた。」



「またふられたの!?笑」



「失敬だな!まあとにかく別れた。」



「ふられたな!笑。まさかとは思ったけど…

 

 バレンタインに彼女いたことある?」



「ん~クリスマスはいるんだけどな。」




彼には、伝説化するほどバレンタインに彼女がいない。


私はいたりいなかったりだけど、毎年雄一にはあげている。




「今年はなにが食べたい?」



「うーん…いままでと違うの!」



「今年も~?笑。う~わかった……」



毎年、彼は決まっていままであげたものと違うものを頼んでくる。



なんにしようかな…



駅へ向かいながら、私は頭の中でいままでつくったチョコを並べた。




そして、毎年口にできない言葉を、そこに添える。





私のこと、いままでに一回でも、好きだと思ったことある?













先週の金曜日、彼と遅い初詣に行ってきた。

「う~寒いっっ!早く来すぎちゃったなぁ~ダッシュ


待ち合わせより、15分も早く来てしまった。



今日はいつもよりちょっと寒い…雪も降り出しそう。


「早くこないかな…」

夕方の5時。


もう混んでないと思ってたのに、みんなおんなじようなこと考えてるんだね。


予想していたより人が多く、屋台もにぎわっていた。





行きかう人を見ていると、離れたところにいる2人の男の人と目があった。


さっと目をそらしたけど、目のはしでこっちに向かってくるのがわかる。


やだ~…怖いよう…


「あのー…おひとりですか??」


「や…人待ってます…」


「ですよねー…

 あのっ…本当に申しわけないんですけど、写メ撮らせてもらっちゃダメですか??笑」



「ええ!?いやです!!」



なんなの!?気持ち悪いよぉー!!




「や、ほんとすいません、1枚だけ…」



2人の動きが止まる。



「俺の彼女になにしてんの?」


うしろから2人の肩をつかむ、大きな手。


「圭くん泣



「やっ!あのすいません!これは…って…」


「え、田中先輩!?


え?


「な、おまえら!!俺の彼女になにしてんの?笑」


???



「いや、あの俺ら毎年やってるゲームの、あれで負けて…」

「ああ!いっつもお前らがやってるやつね笑。あれまだやってんの?笑。」

「はい!恒例なんで笑」

「それで俺の彼女に話しかけたのか…いいセンスしてんな笑」


「あ、先輩、あけましておめでとうございます!!」


「おめでとう笑。今年もよろしくな笑」



満面の笑顔の彼に、たまらず聞いた。


「圭くん!あの…友達??」

「あぁ、怖かったしょ?ごめんね?高校の後輩だよ・・・


「はじめまして!!マリコさん…ですよね?うわさの笑」


「はじめましてあせ…うわさの?」

「圭さんからよく聞いてます!もう飲み会とかほんと…」


「うっさい!!笑」


2人の頭を叩く彼。


「えーなになに?笑」


「マリコもいいから!笑」


「圭さんいっつもかわいいかわいい言って…」


「だーうるせっっ!!おまえら余計なこと言うな!マリコ、ちょっと待ってて!」


「えっ…」


聞き返す前に自分の手袋を私に投げ、走っていってしまった。


「ちょっ!…もうなんなのー…」


「いやあーまさか声かけたのがマリコさんだとは…笑」



2人が顔を見合わせて笑う。



「…ええ?」


「あのー…しつこいんですけど、やっぱり写メ撮らせてもらえないッスかね?笑」


「まだ言ってる!笑。なんなのそれー?怖いよお笑」


「いやー毎年やってるアホな企画なんですけど、ゲームで負けたら

 初詣に来てる人の中で一番かわいい子の写メ撮ってこなきゃいけないんですよね笑。

 かわいくなかったら罰ゲームなんです笑」



ええー!!!!!!!!なんであたし…罰ゲームになるよ!!」


「なに言ってんすかー笑。あの圭さんが溺愛してる彼女サンですよー?笑」

「高校のときあんなに女に興味なかったのに…」

「おまえら、余計なこと言わなくていいから笑」


走って彼が戻ってきた。



右手に2本の缶ビール。

左手には


「はい、マリコ」


あったかいココア。



「ありがとうハート②あったか~いにへ あっつっっ!!!


「もう~慌てるから…だいじょぶ?」


私の顔をのぞきこむ。

「だいじょぶ…気をつけますあせ



「先輩、めちゃめちゃ仲良いですね笑」


「んあぁ、一瞬お前ら忘れてた笑。はいどうぞ」


「いろんな意味でごちそうさまです!!」

「これやるから写メなしね」

「ええー!なんでですか!」


「撮ったって罰ゲームになるよぉー笑」



「なるわけないしょ笑。

 おまえらの携帯に保存されるとか、絶対無理。」



なに普通に恥ずかしいこと言ってるの…



だれの顔も見れなくて、私はまたうつむく。


「いやあー先輩ケチっすね~」


「無駄無駄無駄無駄!かえれかえれ!」


「マリコさん、また今度―!!」

「会わせるかっっ」


からかわれながら、ケラケラ笑う2人をあとにした。


「ごめんね?怖かったしょ。」



「ううんーだいじょぶだよ!圭くん来るまでは怖かったけど笑。

 


…ねえねえ、いっつも飲み会でマリコの話してるのー?笑」


「やーもう…笑。なんで聞くの笑。」


「あ、後輩だから、気使ってそーゆうことにしてくれたのかなー?笑

 はい!」


手袋を差し出す。


彼は手袋の代わりに、私の手を握って彼のポケットにいれる。



私はココアを渡して、彼の手袋をかばんに入れた。


「なんかさ、飲み会とかで、話さないでおこうとは思ってるんだよね笑」



「うざい人になるもんね笑」




「でも話したくなっちゃうんだ」



雪がちらちらと舞い始めた。






今日、寒かったっけ。






夜9時、人より遅めなわたしたちの夕食。





「今日はなにが食べたい?」


「うーん…オムライス!ケチャップのやつーシングルハート*


「はーいよ。あ、ちゃんとうがい手洗いするんだよ。風邪はやってるみたいだから」


「はーいよ♪」


最近彼の口癖がうつってきた。





キッチンにたつ彼は、パティシエのタマゴ。


「どうしてパティシエになりたいの?」って聞いたら、


「うーん…俺が甘いもの好きだから!」



いま思えば、あの無邪気な笑顔にやられたんだろうなあ…



ジュウジュウと、チキンライスをつくる音が聞こえてくる。





そっと彼に近づく。



「なしたー?」



こっちを見ずに彼が言う。



「なんもないよ~」



彼の後ろに寄り添う。




彼の髪からふわっと甘い香りがした。


「いいにおいっ!」


「んー?そんなオナカすいた?もうすぐできるから待っててー」


「ちがっ…髪からいいにおいするの!」


「ああ笑。おれ食べないでね」


「がぶー」


「いって!本気で噛んだしょ!!」


「うめえ」


「座ってろ!!」




怒られちゃった。






テーブルの上を片付け、キッチンに背を向けてテレビを見る。




つくり終わったのがわかる。




両手に2人分のオムライスを持って、彼が静かに私の背に近づく。






私は気づかないフリ。



彼が私の後ろで止まる。








この瞬間が、好き。












うしろからそっとこめかみにキスされる。




「できたよ」



彼の甘い香りとオムライスのにおいが、私の鼻をくすぐった。