日向お誕生日おめでとう♡ | チョロ助を追いかけろ

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子育て奮闘記とHQとCCさくらな日々


※未来記事でお送りします。




本日6月21日は、日向翔陽くんのお誕生日です!!
おめでとう日向!
去年のようなケーキは用意できなかったけど、久々にお話を書いてみたよ(^^;;
間に合ってよかった…

こそっとお送りしたいと思います…

お時間ある人、しょうがねぇから読んでやってもいい。という心の広い方、どうぞお進みください…






★心からの言葉を★





キーンコーンカーンコーン・・・・・

授業終了の鐘の音とともに生徒が廊下に出てくる。その様は巣を叩かれたミツバチのようでもある。
目的の場所に走るもの、友達のいる教室へと向かうもの・・・やっと午前中の授業から解放され、空腹を満たす事ができるのだ。
しかしいつもなら一番に教室を飛び出す日向が、のんびりと自席で弁当を広げ始めた。

「あれぇ?日向が教室でお昼とか珍しくない?」
窓際に机を二つ向き合わせて弁当を食べ始めたクラスメイトの女子二人が言う。
「んー。今日は影山が日直だから昼休み練習できないって言うしさ、何より勉強が・・・」
日向はそう言うと『のりたま』が掛かったご飯を多めに口に頬張った。バレーもしたいけど、赤点取ったらそれどころではない。
「ふーん。あ、今日誕生日って言ってたよね?おめでとう、日向!」
「そう言えば昨日そんな事言ってたねぇ?妹さんケーキ作ってくれた?これは、うちらからねぇ!」
言葉と共に机の上に置かれたのは、駄菓子屋サイズのポテチ。
「え!?いいの?ありがとう!!部活終わったら食べる!!ケーキねぇ、実は失敗したらしくてさ・・・今日リベンジするらしいよ」


昨日の事。クラスメイトが誕生日という話に「おれは明日だよ!妹がケーキ作るって張り切って練習してる」と言ったのを覚えていてくれたらしい。
そんな事もあって、今日は何人かプレゼントと言っておやつを分けてくれるのだ。

今日はなんだか幸せだなぁ。これで昼休みもバレーが出来たらもっと幸せなのに。と気分が上がったところで後頭部あたりに鋭い殺気を感じ振り返ると、廊下から挑むような鋭い睨みを利かせた影山がこちらを見ていた。

ヒッ!と顔を引きつらせる日向。ただでさえ目つきが悪い影山のそれはいつもの2割は増しているように見える。何も言わなくても呼ばれているのが分かるので、日向は席を立ち廊下に出た。影山の視線は、その一連の流れをじっと目を離さずに見ていた。
「な、なんだよっ!?影山ぁ!!にゃ、にゃんのか?コラ・・・」
ファイティングポーズをとる日向と殺気立つ影山に、クラスメイトや廊下を行き交う生徒たちは気にも留めない。この二人のこのやり取りは入学してから1ヶ月も経つとお馴染みの光景となり、今では誰もが驚きもしないのだ。

昼休みの騒めきのなかで二人だけしばしの沈黙。それを破るように影山の顔がだんだんと難しそうに歪み何かを発している。
「・・・ぉ、お・・・」
その変化を見ていた日向の表情も困惑のものに変わっていった。
「なんなんだよ!?」と日向が口にしようとした時。
「誕生日おめでとう日向。プレゼントに前に食べてみたいって言ってた『坂ノ下商店数量限定ジャンボ焼きそばパン』買いに行ったけど売り切れてたぁ。でも坂ノ下のにーちゃんが、今日は放課後また出すかもしれないって言ってたけどさ」
と二人のやりとりなど気にしないクラスメイトから、日向はたまごサンドを手渡された。

ちなみにここ烏野高校は、正門から坂を下ったところにある『坂ノ下商店』が売店代わりとなっていて、昼休みに校外に出てこの店に行ってもお咎めはない。
日向が手渡された『たまごサンド』は、坂ノ下商店の『数量限定ジャンボ焼きそばパン』に次ぐ人気商品だ。

「え!?もらっちゃって良いの?お前のお昼じゃねぇの??」
「おー。今日も部活だろ?帰りにでも食べてよ!お取り込み中悪いなっ!じゃ」
「お取り込み中・・・じゃねぇしっ!あ、ありがとうな!」
立ち去るクラスメイトに日向が言うと、振り返りもせずにヒラヒラと手だけを振って教室に入っていった。

「で、なに?影山??」
何事もなかったように日向が影山に向き直ると、影山が何やらブツブツ言っている。
「食べてみたい・・・坂ノ下・・・・・」
「え??何、影山??用事あったんじゃないの?」
「いや・・・」
そう言って立ち去る影山の背中を見ながら日向は首を傾げた。

・・・今日の影山は変だ。



それは朝の事。
いつものように朝練に向かう日向は、駐輪場から部室へと走る。今日は影山の気配を感じない。一番に部室に到着できる。と思ったのもほんの一瞬、影山はすでに部室の前にいるではないか。
こちらに挑むような鋭い視線を向けている。なぜこんな殺気に気づかなかったのか。と、日向はゴクンと唾を呑み込む。
「お・・・・」
「お?」
絞り出すような影山の声に日向は同じ言葉で返した。
「・・・お、ぉ・・・・・」
影山は視線を反らせ口を尖らせた。
「お・・はよう??」
そのどこか様子のおかしい影山に、日向の「おはよう」が疑問系になった。
「お、おぉ・・・」
「変なの。『おはよう』って普通に言えば良いじゃん。ってか影山、いつも『おはよう』って言わないから、言おうとしておかしくなった?」
「んあぁぁ!!!?」

「おう、朝から仲良いなぁ、お前ら」
その声に振り向けば、田中と西谷が笑いながらやって来る。
「おはざーっす!」
「おはざっすっ!」
「仲良くはないですっ!」
「それはこっちのセリフだっ!ボゲェ!!!」
「っんだとっ!!!?」
先輩に挨拶してすぐに、日向と影山がいつものように言い合いを始めれば、これまたいつもの事と気にも留めずに田中が日向の背中をバシッと叩く。
「日向ぁ、誕生日なんだってなぁ。しょうがねぇからこの田中センパイがプレゼントをくれてやろう」
とメロンパンの形をしたクッキーの小袋を無造作に手渡す。
「ほあぁ!!?いいんですか!?これ最近田中さんがお気に入りのお菓子だぁ!」
「俺は自分の知らない味は人には勧めねぇ。自分が気に入ったモンしかやらないんだ。何故なら俺は頼れるセンパイだからなぁ!」
「あざっす!田中センパイ!!」
「おう!」

目をキラキラさせて「後で食べますぅ」と日向は鞄に仕舞い込む。とその横では西谷も日向と何やら約束を交わす。
すると日向の前にスッとクチバシの大きいキャラクターの箱菓子が差し出された。『勉強頑張れ!』とメッセージまである。
「・・・日向、誕生日おめでとう」
その声に顔を上げればマネージャーの清水の姿。
「ヒャイ!!?し、清水先輩!!!!?いいんですか!?」
「この前そんな話ししてたから・・・」
「ありがとうごじゃります・・・」と消えそうな声で変な返事をする日向の背後に、田中と西谷が言葉にならない顔で迫れば、それを押しのける三つの影。
「こっちは俺達からな!」
と澤村がコアラの絵が描かれたチョコ菓子を差し出していて、菅原と東峰も頷いている。

そんな優しい先輩と日向のやり取りを見ていた影山は、眉間のシワを先ほどよりも深くして何やら呟くことしかできなかった。
「お・・・」


朝、昼…そして放課後部活が始まるまでに、日向が人に囲まれプレゼントをもらうというこの状態は、今日何度もあちこちで見ることができた。それだけみんなに慕われ、コミュ力の高さがモノを言っているのがわかる。
そんな人の輪を一歩離れたところから見ていたのが影山だった。




「お疲れッシター!」
楽しい部活が終わった。今日は最後にもう一つお楽しみがある。日向はいそいそとシューズから通学用のスニーカーに履き替えた。駐輪場からチャリンコに跨がって正門にやってくるとそこには西谷が腰に手を当て立っていた。
「おう、翔陽、朝の約束だ!帰りに『ガリガリ君リッチ』を買ってやるぜっ!」
そう言って親指を立てニッと笑った。
「ほあ!!!アザーッス!」
日向もニカッと笑った。通学カバンには、朝からこの部活の時間までに貰ったたくさんのプレゼントというおやつが入ってる。
この後、坂ノ下に行ってアイスも買ってもらえるし、今日こそ念願の『数量限定ジャンボ焼きそばパン』を買わなくては。いや、今日こそ買える気がする。
そんな平和な空気を一刀両断するように、影山が勢いよく走り去るのが、日向の視界の端に見えた。
「あっ!!!!」
何かを感じた日向が反射的にその背中を追うようにチャリンコを漕ぎだす。
「すみませんっ!おれ先に坂ノ下行きますっ!!!」
あれだけボールを追いかけていたと言うのに、まだそんな体力があるのか。誰もがそんなことを思いながら、坂を駆け下りる二人の背中を部員たちは見送る。

「若いなぁ・・・・」
「旭が言うとなんか・・」
「二つしか違わないだろっ!」
東峰の言葉に澤村と菅原が苦笑すると、その横では、
「何アレ・・・」
「体力馬鹿ってあの二人のための言葉だよね。ま、おかげで今日は『勉強おしえろ』ってうるさく言われないし、よかった。お先に失礼しまーす」
山口と月島がゆっくりと正門を出て行く。

「そう言えばツッキー、日向に単語帳あげたんだってね、俺もチェック用の蛍光ペンあげたんだけど、日向から聞いたよ。さすがツッキー!」
「・・・別に、もう使わないから譲っただけ。いちいち単語聞かれるの面倒だし・・ってうるさいよ山口」
「ごめん、ツッキー!!」



「んあぁぁああああ!!!!!!」
「ぬうぅぅうううううう!!!」
ドドドドッという音とシャアアアアアという音を立てて走る二人を下校途中の生徒たちも他呆然と見ている。
「なんで影山が走ってるんだよ!?」
「うるせ!!クソがぁ!!!」
チャリンコの日向の方が一歩リードしていたが、坂ノ下商店までやってくると、チャリンコから降りる日向の横を影山が追い越した。

「コレ・・・くださいっ!!!!」
手に『数量限定ジャンボ焼きそばパン』を握り店の奥に叫んだのは影山だった。
部活の指導を終えた烏養が店番を変わってエプロンの紐を結びながら出てくる。
「え?早いな・・・お前ら・・・」
いつもなら、着替えだなんだとのんびり店にやってくるバレー部員の二人が肩で息をしながらそこにいるのだ。烏養は勝ち誇った顔でパンを握りしめる影山と、この世の終わりのような顔の日向を交互に見た。

「か、影山ズルイ・・・」
日向には影山の背中越しに見えるショーケースに何も残っていないのが見えたのだった。

怒りを通り越し呆然と影山が支払いを済ませるのを見ていた。
今日一日幸せだった。最後にこのオチはなんなんだろう。今日こそ食べられると思っていた『数量限定ジャンボ焼きそばパン』。今、目の前で買われてしまった。

「肉まんなら、まだあるぞ?」
影山越しに烏養が何か言っているが、日向の耳には入って来ない。
トボトボと店を出るとき、西谷とすれ違う。
「翔陽、そこで待ってろ!今『ガリガリ君リッチ』買ってくるからなっ!!」
西谷にも何か言われている。それすら聞こえない様で無反応のままチャリンコのところまでやってきた日向。

そうだ、もう家に帰ろう。鞄の中にはたくさんのプレゼント。家では可愛い妹がケーキを作って待ってくれている。

ハンドルに手をかけた時だった。
スッと目の前差し出されたそれ。しばらくそれをじっと見た。それは先ほど目の前で売れてしまった『数量限定ジャンボ焼きそばパン』に見える。
とうとう幻覚まで見えてしまったのか。

「お・・・ぉ・・」
日向はその声にゆっくり顔を上げた。朝から何度も聞いたあの変な声。
何度も何度も、今日顔をあわせる度に聞こえた、影山の声。
今日一番の変な顔。なんとなく頬を染め口先を尖らせてるようにも見えた。

「な・・・・」
「おめでとうだコラァ!!!!!」

「なに?」と問いかけようとした日向の言葉を遮った、影山の怒鳴り声とも言えるその言葉。

「え?な、なに??なんで影山怒ってるの??」
怒りたいのはこっちの方だとばかりに日向は上目遣いで影山を見る。
「ああん??なんで俺が怒ってんだクソが!!?」
「はあ??今『コラァ!!』って言ったじゃん!」
「何聞いてんだボゲェ!そこじゃねぇだろがっ!」
「何言ってんのかわかんねぇよっ!!」

見上げる視線と見下ろす視線が絡む。辺りは夕方だというのにまだ明るい。下校する生徒がチラチラと見ているが、二人には御構い無しだ。

しばしの沈黙があって「はぁ」とため息をついたのは影山だった。
「やる・・・」
そう言って無理やり手に押し付けられた焼きそばパン。落ちそうになり、日向はそれを受け取るしかない。
「え・・ちょ・・・」
手元と影山の顔を交互に見ると、さっきより怖い顔はしていなくて。

「お・・とぅ・・」
スッと視線をそらして影山が何かを呟いた。
聞き取れず日向は首を傾げた。
「だから、誕生日なんだろ・・・」
「え・・・」
「おめでとうって言ってんだ、ボゲェ!」

日向は目をパチクリしながら、影山を見た。いつもの怖い顔が嘘のように真っ赤になっている。こんな影山の顔今まで見たことがない。
プッと日向は吹き出した。
「え?ちょ・・・なに?もう一回言ってよ?なんて言ったの?」
「んぁあ!?知るか!ボゲェ!!・・日向ボゲェっつったんだっ!!」

日向は腹を抱えて笑った、今日一番、いや多分今年一番の笑い声だと自分でも思った。
影山は今日一日中、コレを言おうと思って「お、お」ってなってたの?どんだけ人を祝うのが下手くそなの、なにこれ。

「なっ!いつまで笑ってんだ!ボゲェ!」

顔を真っ赤にして言う影山は恥ずかしがっているのか怒っているのか。後者だとしてもちっとも怖くない。
こんなに楽しい誕生日、初めてだ。
可笑しすぎて、涙出そう。

一頻り笑った日向は手にしたジャンボ焼きそばパンの封を開けて半分に千切りその片方を影山に差し出す。

「ありがとう、影山!腹減ってんだろ?半分やるよ」
「って、俺がやったんだろっ!」
既に食べ始めた日向は受け取ろうとしない影山にもう片方の半分のパンを押し付ける。
「上手いから食えって!」
受け取らないといつまでも待っていそうなその勢いに根負けした影山は、パンを受け取り一口嚙りつく。
絶妙なソースと青のり、紅ショウガのコントラストが口の中に広がる。これは売り切れて当たり前だ。普段おにぎり派の影山にもそれがわかった。

「上手いなっ!」
満面の笑みで言う日向と無言で頷く影山。

半分にしたらそれはジャンボでも何でもない、ただの焼きそばパンだけれども。
気持ちは誰にも負けない大きさで。

日向には忘れられない誕生日になった。


「・・・なぁ、影山の誕生日っていつなの??」






END








◆◇◆◇後書き的な◇◆◇◆
久しぶりすぎて、お話ってどう書けば良いのかわからなくなっていた件。
本当に久々だし今日に間に合わせたかったので、誤字や場面展開の無茶振りは目をつぶっていただけたら嬉しいです。
今回、どうにかして影山くんに「おめでとう」って言わせてやろう。と思いついて書き出しました。
原作では、東京に行くには赤点があってはならない。というその辺ですよね。まだ遠征前なので、あの取っ組み合いはこの後になるわけです。
誕生日前後に勉強勉強で日向くん大変だったんだなぁ。と思いました。
そして書き終えて読み返すと…一番心のこもったプレゼントは何気にツッキーの単語帳なんじゃないかと思う。
これはきっと、先日のイベントで美人さんのツッキーがたくさんいたことが関連しているのかもしれません。
時間なかったけど、楽しく書けました。ここまで読んでいただきありがとうございます。